水産試験場
「水産試験場資源部・増殖部」が宮崎日日新聞賞を受賞 −研究企画主幹−
成20年9月22日付けで、宮崎日日新聞社から平成20年度宮崎日日新聞科学賞を「水産試験場資源部(代表者:福田博文主任技師)」、同産業賞を「水産試験場増殖部(代表者:荒武久道主任技師)」の受賞が決定したことの通知がありました。
 宮崎日日新聞社賞は、昨年に続いての受賞となります。
 資源部の科学賞は、「日向灘におけるイワシ・アジ・サバ類の的確な来遊予測技術の開発」に対する評価で、これは、本県の主幹漁業の一つである「まき網漁業」などの重要な漁獲対象でありますイワシ・アジ・サバ類について、日向灘に来遊する量やサイズ(年齢)の予測を行うための技術精度を高めたことが評価されたものです。
 イワシ・アジ・サバ類は、来遊変動が大きく、従来は半年程度の予測も充分な精度で行えませんでしたが、予測精度が上がれば、魚種により異なる漁場の予測や操業・出荷計画の検討が可能となり、漁場探査にかかる経費や労力の軽減と計画的な操業を進めることが可能となります。
 資源部では、日本の太平洋沿岸に広く分布、回遊するこれらの魚種の一定期間内の精度の高い来遊予測を行うため、長年技術開発に取り組んできましたが、これまでに蓄積されたデータ・情報を整理解析し、各年の上半期・下半期単位での来遊(漁獲)水準を的確に予測する技術(予測式)の開発に成功したものです。

日向灘における主要浮魚類の漁獲量予測式(例)

【カタクチイワシ】
@上半期
Y=0.0873X-3283.4 R2=0.9114
X:北部太平洋まき網10-翌6月漁獲量 Y:日向灘翌1-12月漁獲量
A下半期
i)上半期豊漁の場合 Y=0.1959X-209.54 R2=0.9413
X:1〜6月漁獲量 Y:7〜9月漁獲量
ii)上半期通常の場合 Y=2.1284X-98.148 R2=0.8976
X:5〜6月漁獲量 Y:7〜9月漁獲量
※豊漁の判断 1〜4月に月当たり1,000トン以上の漁獲が1月以上ある場合
 ウルメイワシ、サバ類、マアジについてもカタクチイワシと同様に予測式を開発しています。

 更に、最新の成果である冬春季の大型カタクチイワシの大量来遊予測を可能にした知見は、今まで本州中部で回遊情報が途絶えていた大型産卵群の日向灘までの南下を証明したものであり、来遊量予測だけでなく、太平洋のカタクチイワシの資源状況を把握する上でも重要な指標となり、平成19年の水産学会発表において関係者から高い評価を得ました。

今回明らかにした紀伊半島以南の
カタクチイワシの回遊生態

 これまでカタクチイワシは、道東沖から熊野灘間を大回遊するとされていたが、資源の状況によっては日向灘まで回遊海域が広がり、しかもこの日向灘が成熟・産卵の場として重要な海域であることを明らかにした。(右図)
 このことにより、日向灘への来遊予測の精度が大幅に高まるとともに、太平洋のカタクチイワシの資源状況を把握する上で重要な指標の1つとなった。(右図)
FISHERIES EXPERIMENT