(図2)ヘテロシグマ・アカシオの 赤潮発生期間(H24) ●ヘテロシグマ・アカシオについて ヘテロシグマは、魚類のへい死を引き起こす有害種であり、海水1ml当たり10,000細胞以上の密度に達すると養魚がへい死する危険性が高くなり警戒する必要があります。また、本種は分裂を繰り返して増殖しますが、環境条件が整わなくなるとシスト(休眠期細胞)となって海底の泥に付着して越冬し、翌年の発芽を待ちます。つまり、一度赤潮が発生すると大量のシストが海底に堆積し、翌年に大量の栄養細胞が発芽するという可能性があります。北浦湾海域では、過去に発生した赤潮のうち本種によるものが一番多く、平成5年まではほぼ毎年発生していました。平成6年以降は毎年出現するものの赤潮を形成しなくなり、その要因は漁場環境が改善され栄養塩濃度が低下したことが大きいと考えていましたが、平成22年6月下旬から7月上旬にかけて北浦湾周辺海域において大規模発生し、過去最大の漁業被害が出てしまいました。漁場環境が改善されても気象等の条件しだいで大増殖を引き起こすことが確認され、警戒レベルを上げたものの平成23年度は数百細胞の出現にとどまりました。
そして本年度、本種による赤潮は4月末から立て続けに3海域でほぼ同時期に発生しました(図2)。いずれの海域も発生源は、閉鎖性の高い湾や漁港内です。北浦湾と尾末湾ではかなり高濃度に増殖し漁港内から養殖漁場へと広がりましたが、関係漁業者による一斉餌止めと短期間(2〜3日)で終息したことにより漁業被害は生じませんでした。なお、地理的に隔てた3海域で同時期に赤潮を形成したことから、この種の増殖要因はやはり気象や海象の自然現象に起因するウエイトが大きいと言えそうです。
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