水産試験場
宮崎県産養殖カンパチの流通時における鮮度保持技術について 生物利用部
マンビキ、マンタとも呼ばれるシイラ、本県は全国でも有数の水揚げ地となっています。
年変動はありますが年間1,000トン前後の水揚げがあり、夏場を中心とした最盛期には、「しいら延縄漁業」や「しいらまき網漁業」によって、集中的に漁獲・水揚げされるという特徴を持っています。
外国では美味な魚とされ、中でもハワイでは「マヒマヒ」と呼ばれる高級魚ですが、日本での知名度は残念ながら高くなく、あまり喜ばれません。多くの市場では水揚げの約9割が未加工のまま、安い価格で県外へ出荷されるという状況です。
平成17年度に行ったアンケートでは、消費者から、「シイラは加工方法が単調」という意見がありました。
また、加工業者、小売業者からは、「既存の加工方法では更なる需用拡大は望めないので、宮崎ならではの新規加工品が欲しい」という意見を頂きました。
以上の背景、ニーズからシイラの新規加工品を開発し、価格の向上・安定を目指そうと研究が開始されました。
今回開発した新しい加工品は、焼酎の蒸留粕、いわゆる『 焼酎粕』 を使用しております。
なぜ焼酎粕かと言いますと、清酒の酒粕を利用した「粕漬け」の水産加工品はあるのに、これまで焼酎粕を利用した、いわゆる「漬け物」が無かったからということがあります。
また、焼酎粕には原料由来の香ばしい芳香があります。
さらに、クエン酸等の有機酸や、アミノ酸、ビタミン、ポリフェノールやミネラル等、有用成分が多く含まれております。
言うまでもなく、宮崎は屈指の焼酎生産県ですので、焼酎粕は宮崎ならではの素材といえます。これらのことから、この焼酎粕を用いた加工品開発というアイデアが生まれたわけです。
試作の工程は図1のとおりです。まず、焼酎粕と麹を混合し、冷蔵庫で5日間寝かせました。その後塩、砂糖、みりんで調味し、この漬け床にシイラの切り身を漬け込み、冷蔵庫で1〜2晩寝かせました。切り身を取り出し、表面を拭いてオーブンで調理し試食したところ、焼酎粕と麹の風味が十分に発揮されたものに仕上がっていました。
図1 シイラ焼酎もろみ漬け試作工程
しかも、床漬け前のシイラの切り身と、出来上がった試作品の遊離アミノ酸の分析を行ったところ、グルタミン酸やアラニンといった旨味成分や、バリンといった必須アミノ酸が増加していることがわかり、さらに麹を添加するとこれらのアミノ酸の増加が促進されることがわかりました(図2)。
他にも必須アミノ酸のロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、さらには血圧降下作用を持ち、機能性成分として注目されており、もともとシイラの切り身中ではみられないGABA等が増えていることがわかりました(図3)。
以上から、「これはいけるんじゃないか!」ということになり,本格的な開発に乗り出すことになりました。
図2 魚肉中の遊離アミノ酸量(旨味等)
図3 魚肉中の遊離アミノ酸量(その他)
FISHERIES EXPERIMENT