水産試験場
未利用資源からのミール(魚粉)製造の可能性について
物利用部では、未利用又はまだ利用の余地がある魚で作ったミールの養魚飼料原料としての有効性について検討をしてきました。
昨年9月のこのコーナーでは、サンマミールの養魚飼料原料としての有効性について御報告しました。
今回は、第2弾としまして、カタクチイワシ原料として新しい製造方法で作ったミールの有効性について試験を行いましたのでその結果をご報告いたします。

皆さんもよくご存じのカタクチイワシは、宮崎県内では丸干しや煮干しなど加工品としてよく利用されております。全国的には加工品の製造に適した脂質含量の低い魚体(一般的に脂質含量3%以下)がまとまって漁獲される所が少ないことから、多くがそのまま凍結されて、養殖用の餌料として利用されています。
また、既存のミール工場で生産するには、大量の原料魚を必要とするため、カタクチイワシを原料としたミールの生産量も多くありません。
そこで、少量の原料でも動かせる、「エクストルーダー*」という機械でつくったカタクチイワシのミール(以下、エクストルーダーミール)の養魚飼料原料としての有効性について検討しました。

*エクストルーダー:粉砕、混合、混練、加熱、加圧、殺菌、冷却、脱水、押出し、成形など、いくつかの機能を短時間に同時に行える機械で、開発された当初は「夢の食品加工機械」とまで言われておりました。現在では、食品加工のほかに、養魚飼料のEP飼料やペットフードなどの製造にも使用されています。サクサクとした食感のスナック菓子や朝食シリアルなどはこの機械で作られています。

試験方法

エクストルーダーミールと比較のために輸入ミールのそれぞれを配合した試験飼料(以下、エクストルーダー飼料、対照飼料)を作り、平均体重345gのカンパチ1歳魚に与えて8週間飼育しました。
試験飼料は、それぞれのミールを65%に穀類18%、魚油13%、ビタミンミックス2%、ミネラルミックス2%を配合して製造しました。
分析の結果、エクストルーダー飼料の一般成分は、対照飼料よりも僅かに粗タンパク質含量が高い状態でしたが、カロリー、可消化エネルギー比(DE/DCP)にはほとんど差がありませんでした(表1)。

飼育試験結果

(飼育成績)
 図1のとおり、エクストルーダー飼料区のカンパチは、対照飼料区よりも大きく育ちました。
 また、エクストルーダー飼料区と対照飼料区の、日間給餌率はほぼ同じでしたが、日間成長率や増肉係数はエクストルーダー飼料区の方が優れておりました(表2)。
図1 平均体重の推移
表1 試験飼料の配合組成と一般成分、カロリー、可消化エネルギー
  対照
飼料
エクストルーダー
飼料
配合組成(%)
 エクストルーダー処理ミール   65.0
 輸入ミール※1 65.0  
 澱粉・小麦粉 18.0 18.0
 魚油 13.0 13.0
 ビタミンミックス 2.0 2.0
 ミネラルミックス 2.0 2.0
一般成分(%乾燥重量)
 粗タンパク質 45.2 47.2
 粗脂肪 21.2 20.1
 粗灰分 11.6 9.0
 粗炭水化物 22.0 23.7
kcal/kg乾燥重量 4,347 4,395
DE/DCP比
(可消化エネルギー比)
112 109
※1 アンチョビーミール
  対照
飼料
エクストルーダー
飼料
 日間成長率 1.29 1.73
 増肉係数 1.90 1.47
 日間給餌率 2.27 2.24
表2 飼育成績
FISHERIES EXPERIMENT