水産試験場
アーカイバルタグを用いたブリの標識放流について ―資源部―
向灘の大型定置網において重要な魚種であるブリについて、回遊・遊泳生態を明らかにするため、『アーカイバルタグ』を用いた標識放流調査を実施したので、これまでの結果を報告します。
 『アーカイバルタグ』とは、データ記録式のタグで、ブリが泳いでいるときの水温・水深・照度が2分間隔で記録され、照度から位置(経度)が計算されます(図1)。標識したブリが捕まれば、そのブリが泳いだ位置や水温・水深帯が分かるので、それを解析することにより、ブリの回遊・遊泳生態が解明されます。
 平成19年2月20日に延岡市地先において、推定8〜11kgのブリ(近日に大型定置網で漁獲されたブリ)10尾にアーカイバルタグを装着し放流しました。これまでに7尾再捕されており、タグに記録されたデータを解析した結果、以下のことが推定されました。
図1 アーカイバルタグ
図2 放流後のブリの移動
@放流後、5尾は日向灘を南下し、そのうち4尾は3〜5月まで薩南海域に滞留し産卵をしていたと考えられ、南下しなかった残りの2尾は豊後水道南部で同じように産卵をしていたと考えられました(図2)。このことから、冬に日向灘北部に来遊する10kg前後のブリは薩南海域への産卵回遊群が主体で、一部は豊後水道南部でも産卵をしていると推定されました。
A産卵以降の移動では、2尾が4〜5月に大分県で再捕され、5月末に瀬戸内海へ移動したブリも2尾みられており(図3)、そのうち1尾は平成20年2月に再び豊後水道へ移動・日向灘を南下し3月に日向灘南部の大型定置網で再捕さました。このことから冬に日向灘北部に来遊する10kg前後のブリの回遊経路として、『瀬戸内海(夏秋季)〜薩南海域(春期)』が推定されました。今回の結果では、産卵以降日本海へ移動し石川県で再捕されたブリも1尾みられましたが、足摺岬以東へ移動したブリはいませんでした。
図3 産卵以降のブリの豊後水道・瀬戸内海への移動
FISHERIES EXPERIMENT