水産試験場

除去範囲への再進入をどう防ぐか?

ニ類は、砂地があると移動が制限されることが解っています。そこで、砂地に点在してある孤立した岩礁を選んでウニ類除去を行うのも、再進入を防止するひとつの手段ですが、ウニ類の再進入をより確実に防ぐ方法として、ウニフェンスの設置が挙げられます。刺し網を幾重にも折り返し丸めたウニフェンスでは北海道が特許(特許第2805612号)を取得していますが、現在私たちはより簡易な構造のウニフェンス(図2)で再進入防止効果を検証しています。刺し網を丸めたウニフェンスでは、ウニ類の再侵入をほぼ完全に防止することが可能ですが、本県の様に外海に面する場所が多く、波浪流動がきつい場所では安定させるのが困難ですし、有用な水産動物であるイセエビやカニ類等の甲殻類が羅網しやすく、ゴーストフィッシングの発生も懸念されます。これまでのところ、簡易なウニフェンスでも再侵入防止効果はかなり高く、シケの荒波にも耐え、ゴーストフィッシングは全く起っていません。
図2 海底に設置した簡易ウニフェンス(左)と模式図(右)

除去ウニの有効利用〜管理しながら収穫する藻場造成へ

図3 アオサ給餌による肥育個体、藻場及び磯焼け域に生息するムラサキウニの生殖巣重量比(GSI)の変化
焼けが継続する海域のウニ類の大半は、身入りの良くない、商品価値の低いものですので、一部が釣り餌や、海藻が豊富な場所への移植用としてしか利用されていません。いかにやせているとはいえ、ムラサキウニは貴重な水産資源です。このやせウニの有効利用を図るため、肥育する(身入りを改善させる)実験を行いました。磯焼け域で採取したムラサキウニに、漁具に付着したり、海岸に大量に打ち上げられたりして嫌われるアオサを投与しました。その結果、約2ヶ月間の肥育で、良好な漁場のものと遜色ない身入りにすることができたのです(図3、4)。まだ実用規模では試験中ですが、除去したウニ類を有効に活用できれば、漁業を行いながらウニ類の生息密度をコントロールでき、藻場の回復が図られる、「管理しながら収穫する藻場造成」(図5)へと発展できると期待しています。
図4 約2ヶ月間の肥育で改善された身入り
図5 管理しながら収穫する藻場造成のイメージ
6月の動き(県関係)
3日 漁業士認定式及び漁業士会総会(宮崎市)
13日 平成20年度九州各県水産主務課長協議会(福岡市)
FISHERIES EXPERIMENT