水産試験場
藻場造成のためのウニ対策 −増殖部−

磯焼け〜何故藻場は回復しないのか?

焼けの発生原因は、ほとんどのケースで明確ではありません。磯焼けを引き起こした直接的な原因がいつまでもそこに残っているとは限らないからです。磯焼けの直接的原因を把握し、その対策を講じることは藻場造成にとって極めて重要な事なのですが、実はこれはとても難しいのです。ただし、それと同じ位重要な「磯焼けの持続要因」や、「藻場の回復制限要因」は、磯焼けが継続している限りそこに存在しているはずで、詳細な観察や、様々な実験を組み立てることで見つけられます。これまで様々な場所で、それらを探ってきましたが、本県沿岸のほとんどの磯焼けの場所ではウニ類や魚類が海藻を食べる量が、海藻が育とう、増えようとする量を超えていること、すなわち、ウニ類や魚類が食べ過ぎていることがわかりました。ということは、ウニ類や魚類に食べられにくくすれば藻場が回復できると考えられるのです。

食害対策〜今何故ウニ対策なのか?

近特にアイゴやイスズミ類等の食害が磯焼け継続の原因として話題になっています。これらの魚類対策は、当水試はもちろん、各県水試、大学等で盛んに研究されていますが、実際にはなかなか困難で、これまでのところ、囲い網やカゴで完全に囲う以外には有効な手段は見つかっていません。このような現状の中で行う藻場造成は、食害する魚類が少ない場所を選ぶことが重要と言えます。食害する魚類が少ない場所でも磯焼けが継続している場所は多くあります。そこではたいていの場合、ウニ類が極めて高密度で生息しており、ウニ類が海藻を食べ過ぎているのです。こういう場所のウニ対策を行うことで、藻場を回復できる可能性がある場所は割とたくさんあるはずです。
 ウニ類の対策として最も広く知られているのがウニ類除去です。ところが、本県沿岸でウニ類の除去により藻場を回復させるためには、まだまだ解決しなければならない課題が残されていたのです。

ウニ類対策〜どう除去すれば良いのか?

ず、どの位の規模で除去すればよいのか、除去は1回だけでよいのかを知る必要があります。そこで、まず20m四方でのウニ類除去を行ってみました。その結果、除去範囲へのウニ類の再侵入は容易に起こり、僅か4ヶ月程度で除去の効果は失われることがわかりました(図1a〜e)。 しかし、この規模の除去でも一工夫すれば効果を持続できるのです。ムラサキウニの再侵入の過程を詳しく見てみると、1ヶ月後のムラサキウニは除去区の外側の2マスまでの範囲に主に生息しており、それより内側には少ない傾向が見られました(図1a)。この範囲の再進入ムラサキウニを1ヶ月程度の間隔で繰り返し除去すれば、7ヶ月以上除去区の中央付近の生息密度を低く保てるのです(図1f〜j)。縁辺部の除去は、除去区全体の除去よりも低い労力でできますので、一度に広い範囲の除去ができない場合に先行して行う小規模な除去範囲を維持するため、また、後述するウニフェンスの設置ができない場合に有効となるはずです。
 理想は1回除去で長期間効果を持続させることですので、現在30〜50m四方の除去実験をいくつか組み立てて検証しています。
図1 20m四方のウニ類除去実験の結果 実験開始以降のムラサキウニの生息状況結果を示した。上段(a〜e)に、実験開始時に1回だけ除去を行った場合、下段に(f〜j)1ヶ月間隔で、外側の2列の除去を繰り返し行った場合の結果を示した。ムラサキウニの結果のみを示した。1マスは2m四方。
FISHERIES EXPERIMENT