水産試験場
宮崎県産養殖カンパチの流通時における鮮度保持技術について 生物利用部
産物が消費者の手に届くまでに、水産物を生産し流通させる人々が、水産物を安全で安心のため注意を払い、努力を怠らないことは、今や当然のこととなっています。
 漁業者により水揚げされた水産物は、流通・加工を担う人々の手へと委ねられますが、その流通課程において、どのような取り扱いがされているのか、また、安全で経済的な輸送方法とはどのような方法なのかを検証しましたので報告します。
 今回の試験では、養殖カンパチを使い、県漁連の協力をいただいて、その活けしめから市場へ運ばれるまでの鮮度管理条件の違いによる鮮度の差を明らかにしました。

1 活けしめ後の海水氷への浸漬時間

けしめ直後から海水氷浸漬後までの魚体内温度変化を観察した結果,魚体内温度は約1時間で10℃程度にまで低下しました(図1、2)。
 ブリ類において完全硬直に至るまでは0℃よりも10℃で保存した方がATP関連化合物の分解速度が遅く,さらに完全硬直に至るまでの時間が延長することから,海水氷への浸漬時間は約1時間が望ましいと考えられます。
図1海水氷に浸漬したカンパチの魚体温の変化 図養殖2カンパチの活けしめ風景

2 輸送中の温度管理

送中の温度実態調査の結果、夏期において外気温度の変化に伴い魚函内温度、魚体内温度が高くなることが明らかとなりました(図3、4)。
 外気温度変化を再現した試験区と終始低温で管理した対照区において魚体内温度の上昇を比較したところ、輸送中の高温放置が魚函内の氷の溶解を引き起こし、さらに魚体温度の上昇に大きく影響することが確認できました(図5)
図3 輸送中の温度変化(夏期調査) 図4 輸送中の魚体温度測定
FISHERIES EXPERIMENT