SIOの初期の研究では、近海の海生動植物の分類、分布や環境との関係が主題であったとのことで、その集大成として南カリフォルニアの海洋生物便覧というべき“Sea Shore Animals of the Pacific”(Johnson and Snoox,1927)がまとめられており、近海の海生動植物の分類等の研究の一つとして、リッテルは、1907年に日本の“いがぼや(H.igaboya)”に外見的によく似たほやを学名でH.okaiとして報告したものと思われます。そして、この“H.okai”のokaは日本のホヤ研究者、丘浅次郎博士の“丘”だと思われます。つまり、ホヤ研究の世界的な交流の中で、学術的な情報が交換され、互いの研究に対する学問的評価と敬意の証として、同胞種とも言えるほど外見的に類似性の高い太平洋を挟んだ2つのホヤに対して、日本の種には丘博士が米国の研究者の名前を冠して学名をH.ritteri(1906)、標準和名をリッテルボヤ(1927)と名付け、米国の種には当時の日本のホヤ研究の第一人者である丘博士の名前を冠して学名をH.okai(1907)と名付けたものと推測されました。
※学名の種名に人名をつける場合は、人名の部分はそのままで、男性の場合は“〜i”、女性は“〜ae”という語尾を付けます。
このように、“リッテル”はアメリカの生物学者の名前ということになりますが、その命名の由来には、太平洋を挟んで、日米にまたがる研究者同士のドラマがあり、その命名の過程に対して非常に興味をそそられるものがあります。
以上が私の推測を交えての結論ですが、何か新たな情 報があればご教示いただければと思います。