水産試験場
このやっかいな付着生物への対処ですが、付着してから除去するのが困難であることから、現在、極力付着させない方法を検討しています。リッテルボヤの主な餌である植物プランクトンは、およそ数μm〜数十μmのごく小さなサイズです(1000μm=1oです)。一方、問題となる付着生物の卵や幼生の多くは数百μmの大きさですので、海水を数十μmの目合いのフィルターでろ過すれば、餌は通しつつ付着生物の卵や幼生のほとんどを取り除くことが可能と考えられます。したがって、一つの方法として、種苗の付着した採苗器を海に垂下して中間育成を行うのではなく、陸上のコンテナなどでろ過海水を使って育成することが有効な付着生物対策になるかもしれません。この方法については、今後実証試験を行う計画です。
図5 採苗器上の種苗(赤丸)と付着物

養殖の実現に向けて

中間育成を終えた種苗は、付着しているシュロ縄ごと養殖ロープに巻きつけて密度調整を行い養殖を開始します(図4中、右写真)。養殖中は海水中の植物プランクトンなどを食べて成長するため給餌の必要が無く、管理は養殖施設への付着物を年に数回除去する程度です。これまでの試験から、養殖期間2〜3年(採苗から2年半〜3年半)で全長7〜8p以上の出荷サイズに達することが確かめられ、この間の生残率は概ね15〜20%でした。中間育成技術の確立などで種苗を大量に確保できれば、安定した養殖生産が見込めます。
リッテルボヤの養殖は、さほど手がかからず必要経費も少ないことから、漁業者が副業的に行える新たな養殖業として期待できると考えています。現在、延岡市漁協と共同で人工採苗・養殖試験を行っており、数年先の漁業者による養殖の実現を目指している段階です。延岡市浦城町の珍味「リッテルボヤ」を間もなく皆さんにご賞味いただけると思いますので、楽しみにしていてください。
2日 宮崎県農政水産部技術調整会議 本会議(宮崎市)
7日 平成21年度宮崎県水産振興祭水産振興祭 運営委員会(宮崎市)
9日 宮崎県水産業・漁村振興協議会 専門部会(宮崎市)
FISHERIES EXPERIMENT