水産試験場
カタクチイワシの鮮度保持について −生物利用部−
魚飼料原料であるミール(魚粉)は、多くが海外から輸入されています。ところが、近年は、ミールの主要生産国(チリやペルー)における原料魚資源の減少や、世界中の養殖生産量の増大に伴う需要増加によって、価格が高騰し、養魚飼料の値上げも起こっています。
そのため、新たなミール原料魚としてサンマが注目されております。サンマは、北太平洋に広く分布し、その資源量は500万トン程度であると推定されていますが、日本での漁獲は昨年度で35万トン程度と、まだ利用可能な資源があることが明らかとなっております。
そこで、サンマミールの養魚飼料原料としての有効性について検討しました。

試験方法

サンマミールおよび比較のために輸入ミールを配合した試験EP(エスクパンディット・ペレット)飼料(以下、サンマEP、輸入ミールEP)で平均体重644gのカンパチ1歳魚を12週間飼育し、飼育成績や官能試験による肉質の比較を行いました。

飼育試験結果

  1. 試験飼料
    試験飼料は、それぞれの魚粉を67%に穀類16%、魚油・その他を17%加えて製造しました。
    分析の結果、一般成分やカロリー、カロリー/タンパク質比にはほとんど違いがありませんでした(表1)。
  1. 飼育成績
    サンマEP区の成長は、図1のとおり輸入ミールEP区とほとんど差がありませんでした。
    また、増肉係数や日間給餌率についても、まったく差が見られませんでした(表2)。

  図1 平均体重の推移
  1. 官能検査
    試験終了時にそれぞれの試験区のカンパチを刺身にして、「刺身の透明感」、「血合いの色鮮やかさ」、「歯応え」、「旨味」、「臭い」について、水産試験場の職員をパネラーに比較を行いました。
    その結果、サンマEP区のカンパチは、輸入ミールEP区よりも僅かに透明感が劣ったものの、その他の項目については差がなく、輸入ミールEP区と遜色のない肉質であると考えられました(図2)。
  1. その他
    それぞれの試験魚の血液性状や生体内脂質過酸化レベルについても比較しましたが、サンマEP区と輸入ミールEP区で違いはありませんでした。 以上の結果から、サンマミールは養魚飼料原料として十分利用可能であることが明らかとなりました。
    今年度、(社)全国さんま漁業協会と北海道や東北地方の各市場、日本フィッシュ・ミール協会等の話し合いにより、サンマをミール用として6〜6・5万d程度漁獲する計画があります。サンマは、本県の漁獲対象魚種ではありませんが、この試験結果が、本県沿岸の主要漁業である魚類養殖業の飼料価格およびその安定供給対策の一助となれば幸いです。
  サンマEP 輸入ミールEP
配合組成(%)
 サンマミール 67  
 輸入ミール   67
 穀物 16 16
 魚油・その他 17 17
一般成分(%DW)
 粗タンパク質 51.1 50.5
 粗脂肪 23.3 21.7
 粗灰分 13.6 14.9
 粗炭水化物 12.3 12.9
kcal/kgDW 4509 4353
C/P比 88 86
表1 試験飼料の配合組成と一般成分、カロリー、C/P比
  サンマEP 輸入ミールEP
平均体重 Inirial 683 650
Final 1,397 1,455
日間成長率(%) 0.9 1.0
肥満度 24.7 24.8
増肉係数 1.6 1.6
日間給餌率(%) 1.5 1.5
死亡率(%) 0.0 0.0
表2 飼育成績
 図2 官能試験結果
8日 漁業就業支援フェア(大阪府)
20日 水産試験場・利用加工講習会(宮崎市)
FISHERIES EXPERIMENT