水産試験場
アカアマダイの放流技術開発について−水産試験場 増殖部−
つて普及活動のおり、青島の御高齢の漁業者の方が「昔はコズナを釣っていたがもう釣れなくなった。」と言われたのを聞いて、それは何ですかと質問したところ、「ビル」と言われ、その「ビル」がまた分からず、また質問し、それが「アマダイ」のことだとやっと知れた、というようなことがありました。

1.アマダイの漁獲量の推移

 さて、この漁業者の方がいつの頃コズナを釣っていたのかは聞き逃しましたが、属人統計がある昭和49年からの漁獲量の推移を見ると(図1)、昭和49年に16トンあった漁獲は、平成元年には最高の256トンまで増加しています。昭和61年頃から平成2年頃にかけての漁獲量の著しい増加は、活きエビ餌の使用によるものと漁業者間では言われています。しかし、平成2年以降漁獲量は減少傾向となり、平成17年には17トンと、昭和49年に次ぐ低い漁獲量となっています。当水産試験場資源部では、現在のこの状態について「加入乱獲の状態が持続し、資源水準は低く、資源動向は減少傾向にあると考えられる。」としています。なお、漁獲されるアマダイ類のうち、アカアマダイの割合は9割程度となっています。
 (加入乱獲:魚が成熟する前に強い漁獲がはたらき、次世代の資源が確保されず、持続可能でないこと。)
アカアマダイの放流技術開発について−水産試験場 増殖部−

2.アカアマダイの放流技術開発

 アマダイ資源の回復について、資源管理型漁業者実践協議会の中では、漁獲量の抑制、産卵期の保護が提唱されていますが、増殖部では、資源回復のもう一つの方策として、種苗放流による資源の増大を図ることを目的に、平成19年度に「アカアマダイの放流技術開発」事業を立ち上げました。
 事業の内容は、アカアマダイの種苗生産に成功した独立行政法人水産総合研究センターの宮津栽培漁業センター(京都府)からアカアマダイ稚魚を譲り受け、5年間かけ放流技術開発の基礎となる、種苗輸送試験、標識法試験、放流法試験、放流魚の移動・成長調査を行うものです。

3.平成19年度実施内容

 平成19年度は、昨年11月1・2日と今年1月23・24日の2回、種苗を譲り受け当水産試験場まで輸送しています。
 昨年11月に輸送した種苗は、平成18年10月にふ化した満1歳魚の平均全長173mm、78尾で、約14時間かけ、活魚タンク(1トンと0.5トン)に収容しトラックで輸送しました。この種苗は背鰭基部にアンカータグ装着と腹鰭切除の標識を施し(図2)、昨年12月10日に、52尾、川南町地先約15km、水深90m付近に放流しました(図3)。また、標識魚の一部(15尾)については標識の有効性を見るため、現在、陸上水槽で飼育しています。
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