水産試験場
平成22(2010)年ビンナガ来遊状況報告て

産試験場では、昨年8月に制定された「宮崎県における水産資源の利用及び管理に関する基本方針」に基づき、効果的な資源管理を推進するための前提となる沿岸水産資源の評価業務に着手しました。水産試験場が作成した事前評価資料は、資源研究の専門家や業界団体、漁業者代表委員から構成された「県資源評価委員会」で審議を受けた後、日向灘沿岸の水産資源評価結果として、県の資源管理指針に反映されます。今回は昨年10月に開催された第1回委員会の評価結果を紹介いたします。

1.資源評価基準について
資源評価に当たっては、客観的な基準に基づき、対象とした資源の現況を的確に診断する必要があります。このため、「広域資源診断等が行われておらず、本県単独で評価が可能な水産資源」について、「本県水産業における重要性、資源管理の実績、放流等による資源造成、資源水準変化の兆候、評価資料の精度確保」等の観点から、対象種を選定することとしました。
選定された資源については、少なくとも20年以上にわたる資源量指標値(単位努力量当たりの漁獲量等)の推移から資源の状況を判断するものとし、資源レベルを四分位法で「高位、中位、低位」の3段階に、資源動向を原則として直近5ケ年の推移を基に「増加、横ばい、減少」の3段階に区分することとしました。また、資源診断とともに、資源管理方策や資源利用に当たって考えられる提言を付記しています。

2.資源評価結果について
初年度は評価準備の整った9魚種について審議しました。詳細については、水産試験場ホームページ(http://www.mz-suishi.jp/)の「新着情報・お知らせ」に掲示していますので参照下さい。ここでは、資源評価結果の概要について示します。

(1)ヒラメ 資源レベル「中位」 資源動向「減少」
@沿岸漁獲量の半分以上を占める小型底曳網の資源量指標値は、'70年代末〜'80年代中盤、'90年代前半、'00年代中盤に増大したものの、2009年より大きく減少し、現況は中位・減少であると判断されました(図1)。
A国の研究所が中核となって行われた過去の太平洋南部の資源評価、最新の瀬戸内海の資源評価では、再生産成功率(漁獲開始年齢に達した資源量産卵可能な親魚量)の低下が報告され、漁獲圧削減が必要な状態とされています。
B本県でも、市場調査の結果を見ると、産卵に参加していない0〜1歳の未成熟魚の漁獲割合が高いことから、資源動向が減少であることも踏まえ、漁獲開始年齢の引き上げ(再放流サイズの拡大や禁漁区の設定による若齢魚の漁獲圧低減等)を行うことが有効と提言されました。


図1 ヒラメ資源量指標値の変化
[第2種小型底曳網、出漁日数・水揚日隻数当たり漁獲量]

(2)チダイ 資源レベル「中位」 資源動向「減少」
@近年継続した漁獲のある小型底曳網、その他の釣り、大型定置網の資源量指標値は、統計中断期間があるものの、'90年代より増加傾向を示し、'00年代前半までは高かったが、近年は減少傾向で、現況は中位・減少と判断されました(図2,3,4)。
A沖合漁業、沿岸漁業ともに直近での資源量指標値が減少していることから、今後の資源動向を注視する必要があると考えられています。
B将来的には、未成魚サイズの再放流や目合い拡大、休漁日設定による漁獲圧低減を検討していく必要があります。

図2 チダイ資源量指標値の変化
[第2種小型底曳網、出漁日数・水揚日隻数当たり漁獲量]
図3 チダイ資源量指標値の変化
[大型定置網、漁撈体数・水揚日数当たり漁獲量]
図4 チダイ資源量指標値の変化
[その他の釣り、出漁日・水揚日隻数当たり漁獲量]
FISHERIES EXPERIMENT