(3)タチウオ 資源レベル「中位」 資源動向「減少」
@漁獲割合が変動するが、比較的卓越している大型定置網の資源量指標値は、変動が大きく、概ね'90年代が高めで、直近は2008年より減少し、現況は中位・減少と判断されました(図5)。
A太平洋側では、紀伊水道周辺と豊後水道周辺の漁獲が多く、紀伊水道域は2000年から減少、豊後水道周辺でも減少傾向に転じたと関係県が報告しています。
B増減の大きい不安定型の資源ですが、豊後水道内に資源の主体があると考えられることから、資源回復計画に取り組んでいる大分県との連携も必要かと思われます。
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図5 タチウオ資源量指標値の変化 [大型定置網、漁撈体数・水揚日数当たり漁獲量] |
(4)アマダイ 資源レベル「低位」 資源動向「減少」
@漁獲の大半を占めるアカアマダイで診断しました。漁獲の主体となるその他のはえ縄の資源量指標値は、1989年をピークに減少傾向が続き、'90年代末からは低い水準。直近2ケ年は再び減少し、現況は低位・減少と判断されました(図6)。
A漁獲物の銘柄組成からも加入量の減少、漁獲対象サイズの小型化が確認され、定着性が強いことから、早急な資源管理への取組が必要と判断されます。
B産卵親魚を確保するため、産卵期の一部禁漁や主要漁場の一部禁漁を行うとともに、加入量確保のため、現在取り組まれている生き餌規制だけでなく、休漁日の設定等による漁獲努力量の抑制が望ましいと提言されました。
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図6 アマダイ資源量指標値の変化 [その他のはえ縄、出漁日・水揚日隻数当たり漁獲量] |
(5)キス 資源レベル「低位」資源動向「横ばい」
@シロギス主体となりますが、漁獲の多いその他の刺網の資源量指標値は、'80年代後半より減少傾向となり、近年は概ね低位状態が続き、横ばいの状態と判断されました(図7)。
A冬季水温の経年変化と関連が認められることから、数十年単位の海洋環境変動(レジームシフト)が資源に影響を与えている可能性が高いと考えられます。
Bこのため、人為的なコントロールは難しい部分があると思われますが、産卵親魚を残すような管理方策(産卵場・産卵期の禁漁等)が望ましいと提言されました。
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図7 キス資源量指標値の変化 [その他の刺網、漁撈体数・水揚日隻数当たり漁獲量] |
(6)コウイカ類 資源レベル「低位」資源動向「横ばい」
@コウイカを代表資源として診断、半分以上の漁獲を占める小型底曳網の資源量指数は、'90年代に高い値を示した後、緩やかに減少、直近で僅かだが低位レベルに入り、動向は横ばいと判断されました(図8)。
A資源水準が低下してきており、年魚(寿命がほぼ1年)とされることから、年毎の漁獲圧が過度に増加しないよう注意が必要と考えられます。
B現状ではコウイカを目的とした操業を拡大しないようにしつつ、各年の資源動向に応じて管理措置を再検討すること、産卵場所の造成や漁具に産み付けられた卵の保護(海中への還元)など積極的資源培養への取組が提言されました。
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図8 コウイカ資源量指標値の変化 [第2種小型底曳網、出漁日数・水揚日隻数当たり漁獲量] |
(7)クルマエビ 資源レベル「低位」資源動向「減少」
@漁獲の大半を占める小型底曳網の資源量指標値は、'90年代前半より減少傾向に転じ、直近でも減少傾向が続き、現況は低位・減少と判断されました(図9)。
A2000年頃から沖合の産卵南下群を含む春漁が減少し、秋漁主体となっていましたが、近年は秋漁も少ない年が見られます。豊後水道域も減少傾向にあり、大分県豊後水道域、周防灘(複数県)で資源回復に取り組まれています。
B本種も冬季水温の経年変化との関連が認められ、数十年単位の海洋環境変動(レジームシフト)が資源に影響を与えている可能性が高く、人為的なコントロールは難しい部分があると思われますが、稚エビの成育環境(浅海干潟等)の確保、一定の産卵親魚を残すような方策(目合い拡大、休漁日等)、海底耕耘等による漁場保全策が考えられると提言されました。
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図9 クルマエビ資源量指標値の変化 [第2種小型底曳網、出漁日数・水揚日隻数当たり漁獲量] |