水産試験場

今回は試験結果のうち、平成22年7月に実施した試験結果についてご紹介します。ご紹介する試験は表1のとおり試験区を設定しました。その結果、夏季において従来法(対照区)の魚体温度は5℃以下に低下したことが確認され、従来法の輸送では夏季においても魚体温度が下がりすぎ、肉質低下の原因となる可能性が考えられました(図4)。今回は紙面の都合上、データはお示ししませんが、冬季に実施した試験も同様の傾向があり、現状の輸送方法では魚体温度が下がりすぎると考えられました。そこで、梱包資材を検討した結果、スポンジ区の魚体温度が(適温帯と考えられる)5〜10℃に最も近い温度で維持できたことから、輸送方法の改善策においてスポンジが有効と考えられました(図4)。本資材は既に養殖マサバの出荷の際に使用されていることから、本技術の普及が期待されるところです。

表1 輸送試験における試験区の設定
試験区名 各試験区の
梱包資材
氷の量 備考
対照区 (従来法) フルーツネット1枚 2kg 共通資材は、パウチ1枚、発泡スチロール製の穴あき魚函
スポンジ区 フルーツネット1枚、
スポンジ1枚
2kg
フルーツネット
2枚区
フルーツネット2枚 2kg

図4 各試験区毎の魚体温度の推移(輸送試験は平成22年7月14日〜15日に実施)

5 CO2(二酸化炭素)を用いた活け締め方法の改善策について

蓄養マアジの出荷では活け締め処理(水氷締め)を行いますが、出荷現場より、水氷締めする際に魚の一部が暴れるので、品質向上のため改善策はないかとの要望が出されました。このことは出荷時の作業性にも影響すると考えられます。一方、CO2(二酸化炭素)には麻酔効果があることが古くから知られ、この効果を利用して、カナダの養殖サケでは活け締め脱血処理の前処理としてCO2による沈静化処理を行っています。そこで、蓄養マアジの出荷現場でも、このような処理が活用できないか、CO2を海水に添加するためCO2マイクロバブル発生装置を試作(図5)した上で、図6のとおり試験区を設定し活け締め方法の改善策を検討しました。その結果、今回試作した発生装置は10万円以下で自作できるのに加え、本装置は100Lの海水及び海水氷に対し5分程度で規定の濃度のCO2を添加できたこと、肉質については従来法(対照区)と差がなかったものの、CO2を直接海水氷に添加するCO22区では他区と比べ沈静化時間が短かった(図6)ことから、CO2の添加方法や活け締め処理の作業性改善について、一定の成果が得られました。上述しましたカナダの出荷例にありますとおり、本技術は活け締め脱血処理にも活用されていますことから、他魚種における本技術の応用が期待されているところです。

図5 試作したCO2マイクロバブル発生装置とその流路

FISHERIES EXPERIMENT