上記試験の結果、春季に漁獲され蓄養が開始されたマアジは肉質が低下する傾向にありました。そこで、蓄養魚に週に1回程度、魚体が太らない程度に給餌飼育を行うことで肉質が改善できないか試験を実施しました。その結果、給餌蓄養期間中の一般成分や肥満度に顕著な変化はありませんでしたが、破断強度は蓄養開始直後から一旦低下し、その後、試験開始4ヶ月後に回復する傾向が認められました。このことから、この時期では給餌蓄養により肉質改善の可能性が示され、給餌蓄養により出荷時期を調整し肉質低下リスクの軽減を図ることが、品質管理のツールのひとつになるのではと考えています。ただし、蓄養魚に給餌した場合は、JAS規格上、「養殖魚」となりますので、品質表示については注意が必要です。
図3 給餌畜養による一般成分・肥満度・破断強度の推移(平成21年4月26日から畜養開始)
4 輸送中の現状把握と改善策の検討について
蓄養マアジは発砲スチロール製の魚函等で梱包された上でコールドチェーン(冷蔵)により輸送されていますが、過去に他魚種における同様の輸送事例について現況調査したところ、夏季調査では外気温度が20℃を超える高温下に魚が置かれ魚体温度が上昇していた事例や冬季調査では魚肉凍結点以下の外気温度に約3時間置かれていた事例が確認され、輸送時の品質劣化の可能性が指摘されたことから、蓄養マアジでも同様に輸送時の現状把握を行う必要がありました。このため、平成21年度及び平成22年度に計3回輸送試験を実施し、流通(輸送)時の現状把握を行うとともに、現場の漁業者の利用可能な資材を勘案しながら、輸送方法の改善策について検討しました。