水産試験場
マアジ畜養・出荷マニュアルの作成
き網で漁獲されたマアジについては、品質向上のため、無給餌で短期蓄養し、出荷する取り組みが行われています。特に北浦漁業協同組合まき網協業体では、差別化を図るため、体重100g以上のマアジを1週間以上無給餌蓄養した上で、活け締め(水氷締め)処理による出荷を行っています。この処理が行われたマアジについては、いきいき宮崎のさかなブランド確立推進協議会から「北浦灘アジ」と言う名称で水産物ブランド認定を受け、同協業体や北浦漁業協同組合を中心とした関係者のご努力により、全国的にその名が知られるようになりました。しかし、蓄養マアジについては、季節毎の蓄養可能期間や流通(輸送)中の品質管理など不明な部分があり、更なる品質向上や計画的な出荷体制構築を図る上で課題となっていました。また、蓄養マアジにおける市場の評価基準が明らかでなく、「売れる魚」を考える上で把握が重要と考えられました。そこで、生物利用部では、これらの課題を解決するため、北浦漁業協同組合で水揚げされるマアジをモデルにして平成21年度から試験研究を実施し、得られた成果を別添のマアジ蓄養・出荷マニュアルとして取りまとめました。その概要についてご報告します。

1 蓄養マアジにおける市場の評価基準について

蓄養マアジの市場評価基準を明らかにするため、仲買等を対象に聴取調査を行いました。その結果、マアジの購入基準は鮮度重視であり、200〜300gサイズが刺身に好まれること、夏から秋にかけて漁獲されるマアジの評価が高いことなど、市場での判断基準について把握することができました(図1)。また、冬から春にかけての魚については肉質が落ちるため市場評価が低いこと、市場関係者はマアジの産卵期と品質との関連性を疑っていることが明らかとなり、蓄養マアジの品質管理を考える上で貴重なデータが収集できました。

2 春季及び冬季に漁獲されたマアジの蓄養期間について

蓄養用マアジの漁獲量は、例年11月から3月頃までが多い傾向にあります。また上述したとおり、産卵時期の魚は市場評価が低いことが明らかとなりました。このため、冬季及び春季に漁獲され漁獲直後から蓄養されたマアジについて、定期的なサンプリングし肉質分析を行うとともに、漁獲時期の違いと肉質との関連性について検討しました。その結果、約1ヶ月程度までの蓄養は肥満度や一般成分において蓄養開始直後と同等の肉質を保てることが分かりました(図2)。また、刺身の重要な要素である破断強度(この値が高いほど歯ごたえが良いとされる)は、どちらの漁獲時期も蓄養期間を通して1ヶ月はほぼ一定であり、全体的な傾向として冬季の方が春季よりも高いことが分かりました(図2)。以上の結果より、冬季から春季にかけて漁獲されたマアジを蓄養する場合、約1ヶ月は肉質に影響なく蓄養可能であること、また春季に漁獲されたマアジは冬季と比べ肉質が低下しやすい可能性があり、その時期における魚の取扱は注意する必要があります。
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