水産試験場
前ページの結果より、試験Tにおいては、受精卵を強通気にさらすことで、他の試験区に比べ、ふ化率が高い結果となりました。また試験Uにおいては、弱通気状態で、刺激を行わない区では低いふ化率でしたが、48時間後にピペットによる水流で物理的な刺激を一時的に与えた区では、ふ化率が大幅に向上し、奇形・死魚率は低い結果が得られました。よって、これらの試験結果より、ふ化するときに物理的な刺激があることで、ふ化しやすい状況となり、その方法として、ピペットによる水流刺激がふ化率向上に有効な手段となることが示唆されました。
(4)種苗生産試験
試験は、屋内35トンコンクリート水槽を使用し、行いました。卵は、産卵水槽から回収した日ごとに3日分を直接飼育水槽の水面付近に固定して浮かしておいたカゴに入れて、そこでふ化させました。カゴはふ化後、水槽から取り上げました。収容卵数は重量換算で約55.6万粒、ふ化尾数は柱状サンプリング方法で約22.3万尾、ふ化率は約40%でした。カゴに収容した卵については、水槽内の各エアレーションの配置により、水面付近の表層においても常時緩やかな水流ができている状態で管理しました。また、ふ化率が向上したため、受精卵には48時間後にピペットによる水流刺激を与えました。水温管理は自然水温とし、概ね23〜25℃内で推移しました。
回収した卵はおよそ2〜3日でふ化し、ふ化仔魚(図2)は、ふ化後さらに2日後くらいから口が開き始めて、初期の餌としてワムシを摂餌するようになります。特にカワハギは、比較的口の小さな魚であるため、ワムシの中でも特に小さいタイプのワムシを与える必要があります。そこで、孵化後の餌は、サイズの小さいSS型ワムシ(図3)からスタートし、S型ワムシ、アルテミア、配合飼料へ替えていきました。34日令で取上たときの平均全長は約21mmで体重は約1.5gでした。取上尾数は約7,000尾となり、ふ化後の生残率は約3%でした。

3.今後

カワハギ種苗の安定的な量産化体制を実現していくには、受精卵の大量確保、ふ化率向上、生残率向上が今後も重要な要素になってきます。受精卵の確保については、試験が開始された頃に比べれば、かなり向上してきましたが、もっと効率よく確保する方法についてはまだまだ検討しなくてはなりません。またふ化率や生残率については、産卵時期やわずかな飼育環境の違いなどが、結果に大きく影響し、その原因については、よく分かっていない部分が多いのが現状です。よって、今後も基礎的な知見をしっかりと積み重ね、1つ1つ課題を克服していくことが重要であると考えています。そして、近い将来、カワハギ種苗量産化技術の確立により、県内カワハギ養殖のさらなる発展の一助となればと考えています。

6日 第280回内水面漁場管理委員会(宮崎市)
24日 海区漁業調整委員会辞令交付式(宮崎市)
28日 宮崎県農政水産部試験研究評価検討委員会(宮崎市)
FISHERIES EXPERIMENT