水産試験場
カワハギ種苗生産技術開発試験について

1.背景

カワハギは、県内では主に定置網で漁獲され、小型底曳網や刺網でも漁獲されます。味は美味で、料理方法も多彩であり、刺身や鍋物、煮付けに唐揚げなど、どれをとっても文句なしです。また、肝臓、いわゆる「キモ」が珍重され、特に養殖カワハギは天然カワハギに比べ、キモが大きくなる傾向があり、単価は天然物以上にもなることから、県内でも実際に養殖されています。しかし養殖では、種苗は主に自然に生息しているものを採捕しているのが現状であり、安定的に入手するのが困難であることから、種苗生産の要望が徐々に高まり、平成18年度より、水産試験場において、カワハギ種苗生産技術開発試験が開始しました。

2.今年の試験内容及び結果

(1)親魚養成
カワハギの親魚については、主に平成18、19年度に、水産試験場で種苗生産した稚魚から養成したカワハギ70尾と、これに加え、今年度は、県内のカワハギ養殖業者から約200gの大きさのカワハギを50尾購入し、親魚としました。餌は主に配合飼料を給餌しましたが、産卵期となる5〜7月頃の少し前の時期から、配合飼料にビタミン剤を添加したり、エビを給餌したりしながら飼育を行いました。親魚の飼育は屋内の18トン及び5トンコンクリート水槽で主に行いました。
(2)採卵方法
カワハギは、アユやメダカと同様、卵(粘性沈着卵といいます)を何かに付着させるように産卵するタイプの魚であり(図1)、試験が開始された当初は、産卵された卵をどのように回収するかが大きな課題でした。そこで、いろいろな産卵基質(いわゆる卵を付着させる材料)を検討してきた結果、砂に産卵させると比較的回収しやすいことが分かった為、卵回収の方法として、飼育水槽内に人工的に設置した砂を入れ、産卵床としてそこで産卵させて、卵を回収する方法を取り入れました。
図1 産卵直後の卵
(3)ふ化率試験
課題の1つであるふ化率向上を目指して、ふ化率の比較試験を行いました。
方法としては、100Lの海水を入れ23℃に調整しておいた水槽に、回収した受精卵(砂付き)を約5000〜6000粒程度(重量換算)を均等に入れ、約72時間無換水状態で、表1のとおり、それぞれ異なる試験区を設定して卵管理を行い、ふ化率を比較しました。通気は、小型の丸形エアーストーンを使用し、常時通気しました。ふ化仔魚の計測は、完全にふ化し終わったと思われる約72時間後に計数しました。
表1 試験区の概要及び結果
試験I(6/8〜6/11) 正常孵化率 奇形・死魚率
  1. 弱通気標準区
29% 9%
  1. 弱通気高濃度DO区
    (他の区に比べ2〜3mg/l程度DO高く設定)
40% 18%
  1. 強通気区
50% 17%
  1. 弱通気昇温区
    (24時間後及び48時間後に1℃ずつ上昇)
20% 21%
試験II(6/11〜6/14) 正常孵化率 奇形・死魚率
  1. 中通気標準区
33% 26%
  1. 弱通気48時間後刺激区
    (48時間後にピペットにより卵に勢いよく水流を与える)
79% 12%
FISHERIES EXPERIMENT