水産試験場
養殖用飼料の現状分析と課題について ―生物利用部―

はじめに

様もご存じの通り、本県では北部及び南部海域で盛んに海面養殖業が行われています。養殖魚種としては、ブリ類が最も多く生産されており、中でもカンパチの生産が多く、その生産量は4,792tと全国第2位(H17年)となっています。
 余談になりますが、カンパチとは漢字で「勘八」や「間八」と書きます。その理由は、魚の額に漢字の八の字のような黒い筋が二本走っているところからだそうです。
ブランド認証第一号「宮崎カンパチ」

養殖飼料の現状

給餌の様子
県のカンパチ養殖では、主にモイストペレット(以下「MP」という。)が飼料として用いられており、その原料は多獲性魚種であるカタクチイワシやアジ類、サバ類が使われています。
 MP飼料の問題点としては、冷凍原料魚の魚種や品質が不安定であるためMPを作った際に栄養が不安定になる恐れがあることが上げられます。質の悪い餌を与えれば、カンパチの品質(肉質)の低下はもとより成長が悪くなったり、抗病性が低下して病気に罹りやすくなるなどが心配されます。
れに対応するためビタミン添加剤等も市販されているのですが、使用する冷凍原料魚の種類によって添加方法等を調整しなければ十分な効果が得られないことが考えられます。
 そこで、養殖現場ではビタミン等の添加によりMPを安定的かつ効果的に製造し、カンパチを効率的に成長させる必要があることから、平成17年に養殖現場で使われているMP飼料の実態調査を実施し、今後、予定している効果的なMP製造の研究に必要な基礎資料を得ることとしました。

養殖業者の飼料成分の実態調査結果

成17年6月、9月、11月にカンパチ養殖業者から計9サンプルを入手し、一般成分(粗タンパク質、脂質量)、ビタミン含量(アスコルビン酸(ビタミンC)、チアミン(ビタミンB1))及び脂質過酸化レベル(TBARS値、POV値(過酸化物価))を調べました。
 分析の結果、一般成分については粗脂肪含量に大きな違いが見られ、これは冷凍魚の魚種の違いによるものと考えられました。
 ビタミン含量については、アスコルビン酸とチアミンは非常に少なくなっていました。その原因としてアスコルビン酸は元々不安定な物質であるとともに、生餌の品質劣化、MP調整時や保存の過程で温度や光、活性酸素などで分解されてしまったことが考えられます。また、ビタミン剤を添加しているにもかかわらず、少量しか含まれていないものもあったことから、ビタミン剤の添加量やMP調整後の保存方法も注意する必要があると考えられました。チアミンは冷凍魚にカタクチイワシを使用している場合は、ビタミン剤を添加しているにもかかわらず含有量が少なかったことから、ビタミン剤の適正な添加方法の改善も必要であると考えられました。
 一方、脂質の過酸化レベルを示すTBARS値とPOV値は、両方とも高い状態であることから飼料の改善の必要があることが分かりました。

今後の取組

近では、カンパチ単価の低迷に加え、配合飼料に使われる魚粉の高騰、冷凍原料魚の高騰などで養殖業界はかなり厳しい状態にあります。そこで、今回の養殖用飼料の分析結果も踏まえて、平成18年より水産試験場では養殖経費のうち一番割合の大きい飼料の費用を少しでも削減でき、なおかつ効率よく健康で美味しい魚を作るための研究に取り組んでいます。
8月の動き(県関係)
3日 第322回宮崎海区漁業調整委員会(宮崎市)
10日 遊漁船業務主任者養成講座(宮崎市)
22日 水産振興祭第1回運営委員会(宮崎市)
29日 県中部地区密漁防止対策協議会(宮崎市)
31日 宮崎県農政水産部技術調整会議 本会議(宮崎市)
FISHERIES EXPERIMENT