水産試験場

○付着期を迎えた浮遊幼生をなるべく多く付着基盤のホタテ貝殻に付着させるには?
〜付着基盤の事前処理(活貝飼育水への浸漬)の効果〜

浮遊幼生の毎日の「世話」をひたすら約25日続けると、浮遊幼生は、D型幼生からアンボ期幼生、付着期幼生へと成長します(図2)。この間、様々な理由で減耗が起こり、生産が中断・終了することも多々ありますが、「眼点」と呼ばれる黒点を持つ付着期幼生まで持ってこれれば、次のホタテ貝殻への付着工程に進むことができます(図3)。
図2 D型幼生(0.08mm)・アンボ期幼生(0.19mm)・付着期幼生(0.36mm)例

図3 ホタテ貝殻への付着飼育
図4 成貝処理による付着促進効果
付着工程では、付着期幼生が出現した水槽にホタテ貝殻を投入すると5日程度で付着して稚貝となりますが、浮遊幼生の成長具合とホタテ貝殻投入のタイミングを合わせるのが難しく思ったように付着稚貝数を伸ばすことが困難でした。
そこで、この対策として他県のマガキの事例を参考に、幼生を付着させる直前に付着基盤のホタテ貝殻を生きたイワガキ成貝の飼育水に数時間漬け込むこと(成貝処理)による付着促進効果について検討しました。
同数の浮遊幼生が入った水槽に、それぞれ同数のホタテ貝殻、一方は成貝処理を行ったもの、一方は行っていないものを投入した結果、成貝処理したホタテ貝殻の方が約2倍の付着稚貝を得ることができ、イワガキでも応用可能なことがわかりました(図4)。
ちなみに、これは、生きた成貝が飼育水中に出すある種の物質がホタテ貝殻に付き、それが浮遊幼生のホタテ貝殻への付着を促すからと考えられています。

○付着期を迎えた浮遊幼生をなるべくばらつきが少なくなるように付着させるには? 〜間欠式エアレーションの効果〜

付着時の課題として、付着稚貝数を伸ばすことの他に、投入したホタテ貝殻へなるべく均一かつ適正数で付着させるということがあります。生産の効率化、無駄を少なくするという点でホタテ貝殻1枚あたり20個〜30個が適正とされています。
今回、他県でも試みられている間欠式のエアレーション(水槽底の複数個所から一定間隔でエアレーションの切り・入りを繰り返す方法)を行い、従来型の水槽の中心1か所での連続エアレーションを行った23年度の付着結果と比較してみました。なお、23年度は前述の成貝処理を行っていないので、今回比較するものは成貝処理を行っていないホタテ貝殻を投入した水槽の結果を用いています。

図5 各付着基盤連・各付着基盤ごとの付着個数分布(左:H23連続 右:今回 間欠)
FISHERIES EXPERIMENT