水産試験場

B放流にかかった経費のモトはとれているのか

これを「費用対効果」と呼んでいます。
費用対効果は、マダイで平均1倍(0.3〜1.8倍)、ヒラメで平均1.1倍(0.6〜1.6倍)です(図5、図6)。概ねモトはとれていると考えます。これを金額に直すと、マダイで平均8百万円(3〜19百万円)、ヒラメで平均16百万円(7〜23百万円)となります。

C総じて放流効果はあるのか、ないのか(考察)

マダイもヒラメも、以前より資源が減っている悪条件の中、放流魚は漁獲量を1〜2割底上げし、更に再生産にも寄与しているでしょうから、それなりの放流効果はあると言えます。しかし、回収率と費用対効果が低迷していることは大きな問題です。
回収率の低迷は、「放流魚が資源にうまく加入できていない状態が続いている」ことを意味します。なぜうまく加入できないのか、その原因は鋭意調査中です。
一方、費用対効果の低迷は、回収率低迷と併せて魚価の下落も大きな原因と考えられます。社会情勢の変化の中でだんだんと下がっていった魚価を上げることは大変なことだとは思いますが、見えない海の中の出来事を操作することを思えば、まだまだ大きな可能性を持っていると思います。費用対効果を改善するには、マダイとヒラメの魚価向上に取り組むことが、より確実で近道だと考えます。

Dこれで魚価アップ!

昨年11月の水産宮崎No.637で、いくつかの魚価向上策のアイデアを提案しました。すなわち、「冬のマダイはありがたい」→冬は他県での漁獲が減るので日向灘産マダイの売り時は冬であること、「大型だからこそマダイ」→1kg以上から高値が付くので、できる限り大きくなってから漁獲すること等々です。
さて、今回も調査の中で見つけた新しいネタをご紹介します。
まずは写真をご覧ください。

赤い線で囲った部分にコブが2つあります。昨年度からマダイの買い取り調査をする中で見つけました。初めは「骨の病気か!?」と驚きましたが、調べてみると、血管棘が肥厚したもので、通称「鳴門骨」と言われているそうです。なぜこのようなコブができるのか、未だ科学的な根拠は示されていませんが、俗に「渦潮で有名な鳴門のように潮の速い海域で育った証」であり、言い換えると「高級天然マダイの証」とのこと。しかも、どこかの寿司職人が「まだ実物を見たことはない」と言うほどのレア度・・・昨年からの調査でこの骨に出会った回数は、実は1度や2度ではありません。日向灘産マダイにはかなりの確率で見られるのではないかと感じています。このことは大きなセールスポイントになるのではないでしょうか。

FISHERIES EXPERIMENT