水産試験場
そこで、この測定機器に予め本県養殖マサバの総脂質データを入れておけば、現場で測定ができるようになります。分析した総脂質データを用いて総脂質量を推定するための検量線を作成し、その検量線の検定を行いました(表1、図6)。

表1 養殖マサバ総脂質測定検量線の選択波長と評価

Fat(%)=21.1942−1187.4250d2log(1/R816)+1433.6358d2log(1/R860)−936.0753d2log(1/R900


図6 養殖マサバの吸光度2次微分近赤外スペクトル(総脂質を5段階に色分け)


脂肪の吸収が908nm付近に見られ、その吸収のピークは、総脂質によって違っていることが分かりました。近赤外スペクトルの吸光度2次微分値と化学分値から重回帰分析により作成した総脂質検量線(表1)を用いて化学分析値と近赤外推定値との関係を見てみました(図7)。

表1で算出した検量線の検定時の近赤外推定値(○のプロット)は、化学分析値から±5%の範囲内でした。このことから、養殖マサバにおいて、近赤外分光分析装置での脂質測定が可能であることがわかりました。ただし、誤差は±5%で、総脂質約15〜35%の範囲内でしか使えず、範囲外は測定できません。
今回の試験によって、近赤外分光分析器を使って養殖マサバの総脂質を非破壊的に測定する技術が可能となりました。今後は、これらの成果を用いて、養殖マサバを出荷時に脂質測定し、脂の乗り具合をそろえて出荷することが可能となり、「思っていたより脂が乗っていなくてがっかりした」ということがなくなるかもしれません。
また、脂の乗りはどのくらいがいいのかは好みで違いますが、場合によってはマサバは脂っこいという方もいます。そこで、消費者は脂質が何%あれば「脂が乗っていて美味しい」と判断されるのかを現在研究しているところです。
そして、近赤外分光分析器は、マサバだけでなく、他の魚種にも応用ができますので、今後、他の魚種についての検討も行っていきたいと思っています。
また、水産試験場には、加工機器等を使って様々な水産加工品の試作が行える水産加工指導センターがあります。加工品のアイディアがあるので設備を利用したい、新製品の試作を行いたいなどの希望がありましたら、ぜひ水産試験場生物利用部加工担当(0985-65-1511)まで御相談ください。
5月の動き(県関係)
1日 平成25年度宮崎県資源管理協議会通常総会(宮崎市)
10日 沿海市町・振興局水産主務課長会議(宮崎市)
FISHERIES EXPERIMENT