水産試験場

B放流にかかった経費のモトはとれているのか

これを「費用対効果」と呼んでいます。
費用対効果は、マダイで平均1.5倍(0.7〜2.9倍)、ヒラメで平均1.1倍(0.6〜1.6倍)です(図5、図6)。概ねモトはとれていると考えます。これを金額に直すと、マダイで平均15百万円(4〜37百万円)、ヒラメで平均16百万円(7〜23百万円)となります。

C総じて放流効果はあるのか、ないのか(考察)

まずはヒラメについて考察します。
ヒラメは漁獲量が減少傾向を示す中、毎年の放流魚混獲率は平均15%と、マダイと比較して漁獲量に対する放流魚の寄与は大きいようです。他県海域と比較しても、見劣りしないレベルと言えるでしょう。また、天然魚と放流魚双方の親魚量を推定した結果、全親魚量の16%が放流魚であったことから、これらによる再生産の効果も考え合わせると、放流の効果はより高く評価できると考えます。
一方、マダイでは、放流魚混獲率は平均9%、全親魚量に占める放流魚の割合は平均8%と、放流によるインパクトは、漁獲量に対しても再生産に対してもヒラメより低いようです。なぜかというと、ヒラメよりもマダイの方が、天然魚資源が多いからです。
では、もっとマダイの放流尾数を増やせば、放流によるインパクトも大きくなるのではないか、そういったご意見をしばしば頂きます。
ところが、近年のマダイ回収率はかなり低い状況にあります。放流尾数を増やしても少ししか回収できないのであれば、放流尾数を増やす意義は小さいでしょう。
さらに、マダイは天然資源も減少傾向にあるようです。
図7と図8にマダイ資源尾数の経年変化を天然魚と放流魚に分けて示しました。天然魚資源尾数は平成6年をピークに翌年から右肩下がりに減少しています。なぜでしょうか。この原因の一つと考えられるのは「親が沢山いるのに子が少ない」という現象が平成7年以降継続して起きていることです。また、放流魚資源尾数も天然魚と同様に減少傾向にありますが、これは「放流しても資源に加わるのは少しだけ」という現象が平成8年以降継続して起きているからだと考えています。これらの現象がなぜ起きたのかという部分については明らかになっていません。
このように、マダイ資源尾数がなぜか減少し続けているような悪い状況の中でも、漁獲量や全親魚量の約1割は放流魚であることから、マダイの放流は少なくとも資源の底支え効果があると考えます。
FISHERIES EXPERIMENT