水産試験場

飼育水の水質悪化防止と原虫類繁殖対策

次に、カキ幼生の成育に悪影響を及ぼす水槽内の水質悪化や原虫類の繁殖(図4、5)を抑えるために、飼育水の交換方法(使用メッシュフィルタの選択など)、原虫の効果的な除去方法を模索し、よりよい方法を選択する必要があります。また、飼育水温が低いと幼生の生育が遅くなり、初期の弱い時期が長引くことで減耗しやすくなると考えられるので海水温より暖かい外気やヒーターを用いて加温調整を行なうことが有効と考えられます。
突然大量へい死した浮遊幼生 沈殿ごみと原虫類の繁殖
図4 突然大量へい死した浮遊幼生 図5 沈殿ごみと原虫類の繁殖

浮遊幼生の効率的付着の制御

浮遊幼生期を何とかクリアしても終盤のホタテ貝殻への付着において、1水槽あたりできるだけ多くのホタテ貝殻に、多すぎず少なすぎず、さらに均一に付着させることが求められます。その後の生育を考慮すると、おおむねホタテ貝殻1枚(表裏)に20個から30個のかたよりのない均一な付着が適正と考えられています。 1水槽あたりの付着個数を増やすには、水槽へのホタテ貝殻の投入数を増やすことで見込めますが、一方で貝殻が障害物となり飼育水の動きが滞り、急速な水質悪化を起こすことが懸念されます。また、図6のように、1ホタテ貝殻あたりの付着数が少なすぎたり、多すぎたりして、せっかく採苗した稚貝が無駄になったり、効率の悪い養殖になってしまいます。 今後、他県事例のエアレーション方法の改善やホタテ貝殻の前処理などの方法を参考にして対策を検討していきたいと考えています。
過少 数適正 過多
過多 数適正 過少
図6 ホタテ貝殻へのイワガキ稚貝の付着状況

今後の方向

水産試験場では、ご紹介した人工種苗生産試験のほか、生産した種苗を用いて養殖試験を行なっており、海域(場所)による成長の違いや、夏場に成長が悪くなること、減耗が発生しやすいことなどがわかってきました。減耗には、夏場の水温上昇、貝の生理、貝を食害するヒラムシの影響等が考えられ、対策を視野に効率的な養殖方法を検討していきたいと考えています。 本県沿岸で行なわれている魚類養殖に加え、複合的にイワガキや海藻類の養殖を行なうことで「漁場環境の保全と同時に副収入も得る」、このような展開の実現をめざして試験を行なっていきたいと思います。
2月の動き(県関係)
7日 宮城県農林水産部長らによる知事表敬訪問 29日 水産業・漁村振興協議会儲かる水産業実現PJ専門部会
23日 第353回宮崎海区漁業調整委員会    
FISHERIES EXPERIMENT