水産試験場

平成23年度イワガキ人工種苗生産試験結果と、安定的かつ効率的生産のための課題

今年度は、6月21日を皮切りに8月22日開始の5ラウンドまで5回採苗を試み、5ラウンド目で約1万5千個の付着稚貝(ホタテ原盤480枚分)を得ることができました(対前年約20倍)(図1)。
図1 人工種苗付着ホタテ貝殻連例(H24.1.16)及び同付着ホタテ貝殻例(H24.3.9)
途中減耗で生産を断念した1〜4ラウンドについては、1ラウンド目が6月半ばで水温が20℃前後と低かったこと、また、その後のラウンドも親貝が十分成熟していなかったことが主な原因ではないかと考えています。良質卵を得た5ラウンド目は、昨年度の知見に基づき給餌量を一定以上に調整することで順調に推移しました。それでも、水質悪化や原虫発生により一部の水槽で大量へい死が発生するなど、確実な、安定した生産を行なうにはいくつかのハードルがあることが再認識されました。 今年度、水槽内の浮遊幼生の飼育密度や給餌量の調整等によりある程度の稚貝を得ることができましたが、いくつかの課題がみえてきました。

良質卵を得るための親貝の確保と選択

まず、大切なことは、十分に成熟した親貝をタイミングよく用いること。このためには、普段から親貝候補を数多く確保・養成しておき、飼育水温状況と、別に用意したモニター用カキの生殖腺の発達状況から採卵・採精タイミングを予測し、できる限り多くの親貝を使い、その中でも状態のよいものを複数選択して用いるという方法が考えられます。 今回5ラウンドで用いた親貝を図2に示しましたが、軟体部が大きく膨らみ、図3左側のように生殖腺(断面の白い部分)が発達していました。図3右側の4ラウンド親貝(採苗不調)でも高い発達状態にあると思われましたが、この程度でもうまくいかず、親貝選択の重要性を痛感したところです。
図2 5ラウンド使用親貝と選択貝(赤丸♀、青丸♂)(右図:♀拡大、軟体部重量85g)

5R

4R
図3 5ラウンド゙親貝(左)と4ラウンド親貝(右)の生殖腺発達状況(断面)
FISHERIES EXPERIMENT