水産試験場
昨年の、赤潮定期調査における栄養塩濃度は近年同様低濃度で推移しており、底質環境も含めて北浦湾の漁場環境の悪化を示すデータはありません。逆に、赤潮発生前の6月7日の定期調査においては、栄養塩濃度が極端に低い値を示しており、透明度も7〜10mと高く植物プランクトンが少ない傾向にありヘテロシグマも確認されませんでした。また、その調査日から赤潮発生が確認された6月22日の間に15日間中10日間が雨で合計240mmの降雨が観測されていました。更に、赤潮発生期間においても、雨や曇りがちの日が多く日照時間の少ない日が続き栄養塩濃度も低濃度で上下していました(図5)。
 

図4.H.akashiwoの赤潮発生状況(6月26日)

図5.H.akashiwoの赤潮発生状況(7月7日)

つまり、シストが水温条件により発芽した時期に、仮に他の植物プランクトンの競争者が少なければ、降雨による栄養塩の供給があり強い光を好む他の植物プランクトンに勝って栄養塩を吸収して増殖し、度重なる雨がもたらす程々の栄養塩を弱い光条件のなかで上手に利用し増殖していたことが推察されます。どうやら、種間競合と赤潮発生前と発生期間中の晴れ間が少なかったことがポイントのようです。
しかしながら、例年、梅雨時期に本種の低濃度の出現は確認されるのに十数年間増殖しなかったことは、漁場環境の改善による栄養塩濃度が低下したからではなかったのか?他の珪藻類等のプランクトンが程よく存在し梅雨の間の晴れ間が程よくあったからなのか?この要因については、過去の水質及び気象データを洗い出し、引き続き検証していきたいと思います。


図6.H.akashiwo発生時の細胞密度、降水量と
DIN、DIPの推移

それから、大量のシストの発芽を心配した今年度は、昨年より早い5月16日に湾奥部で最高41細胞/ml(底層水温20.2℃)が初観測されました。その後5月20日に「潮色が悪い」との情報を受け5月21日に臨時調査を行いましたが、湾奥部の港内で最高165細胞/mlの出現にとどまりました。その後の増殖を心配しておりましたが、幸いにも昨年赤潮が発生した6月は、珪藻類が優先しヘテロシグマは0細胞/ml、7月が最高4細胞/ml、8月が最高21細胞/ml、9月が0細胞/mlで消滅した(シスト化)と考えています。
今年の梅雨は、降水量が多かったのが特徴でしたが、昨年の赤潮形成時期に本種の出現が無かったという皮肉な結果となりました。ヘテロシグマの増殖要因の謎は深まるばかりです。なお、今年度の出現状況から、昨年大量に堆積したはずのシストは台風や潮流の影響で拡散または底泥中に埋没している可能性が示唆されました。これまで同様に、湾奥部の浅場や港内のみが翌年の種場となるようです。
赤潮の発生機構の解明については、これからも鋭意取り組んでいくこととしますが、まず出来ることとして定期的にモニタリング調査を行い有害プランクトンの早期発見と現場からの情報収集に努めることを継続してまいります。今後とも、海水の着色や異常を確認された場合は、水産試験場(0985-65-1511)又は地元振興局(東臼杵農林振興局:0982-32-6135・南那珂農林振興局:0987-23-4312)まで御連絡ください。
一方、赤潮発生時の対策としては、一般的には餌止めと避難(生け簀の移動や沈下)がありますが、ヘテロシグマは昼間の表層凝縮性が高いことから、早期に餌止めを行い生け簀にむやみに近寄らないことが現実的な対策になると考えられます。船が生け簀に近づくと餌がもらえると思って魚は浮いてきますので、赤潮が分散し警戒密度を下回るまで、いかに養魚を生け簀の底の方でおとなしくさせておくかが重要となります。水温が上昇する養魚の成長期に餌止めをすることは、目標出荷サイズへ大きな影響を与えると思いますが、餌止めをするとしないとでは、へい死率に数倍も差があることは実験的にも確認されています。
今後は、カレニア・ミキモトイとともに、ヘテロシグマ・アカシオについても最大限の注意が必要です。

7月の動き(県関係)
11日 宮崎県資源管理協議会(宮崎市)
22日 第285回宮崎県内水面漁場管理委員会(宮崎市)
23日 宮崎海区漁業調整委員会委員辞令交付式(宮崎市)
第350回宮崎海区漁業調整委員会(宮崎市)
30日 いきいき宮崎のさかなブランド確立推進協議会委員会(宮崎市)
FISHERIES EXPERIMENT