水産試験場
水産試験場からのお知らせ ―水産試験場―

平成22年度の水産試験場の新規・重点事業の紹介

産試験場の試験研究につきましては、日頃から情報提供や試験操業への御協力を賜り、厚く感謝申し上げます。
 水産試験場では、資源部、増殖部、生物利用部の3部が、それぞれ「漁業の効率化と資源の適正管理のために」「豊かな海づくりのために」「水産物の安全性と品質向上のために」をキーワードに試験研究を進めています。
 これらの部で22年度に取り組む新規・重点事業の一部につきまして、紹介します。
1. 日向灘海況情報提供システムの開発に関する研究(H22〜26:資源部)
在の海洋観測手段には種々の制約があり、水温・塩分・流れ等の各情報に時間や場所の偏りがあります。そのため、海況情報として活用するためには相互補完が必要な状態にあり、より活用しやすい海況情報の提供が求められています。そこで、海洋観測網の検討、情報統合技術の開発及び情報提供の運用に関する研究を行い、漁業者・試験研究のニーズに対応する日向灘の海況情報を提供できるシステムを構築していきます。 
2. 主要浮魚類の資源生態に関する研究U(H21〜25:資源部)
れまで、イワシ、アジ、サバなど主要浮魚類の資源に関する研究に取り組み、漁況予測の精度向上に貢献してきましたが、現在、太平洋系群の資源状況が大きく変化しつつあり、日向灘における資源生態について更に研究することにより、予測手法の一層の精度向上を図ります。
3. 藻場の生態学的特性の把握と造成技術の確立(H22〜24:増殖部)
県沿岸では、高水温化傾向などの環境変動により生態系バランスが変異し、海藻と動物の「食べるvs食べられる」バランスが変異し、磯焼けの進行と持続が起こっています。これまでの研究により魚類の食害が起こりにくい条件の発見や、対食害戦略を持つ海藻の発見とあわせて、魚類の行動生態把握技術の向上による有効な魚類対策の見込みが出てきたことから、これらの発見、技術を取り入れた魚類の食害を克服する藻場造成技術の確立を目指します。
4. 漁場環境を浄化・保全する生物の複合型増養技術の開発(H21〜24:増殖部)
枚貝等のろ過食性生物を増養殖することにより、周辺の水質浄化・保全が期待できますが、単独の増養殖では栄養塩類の回収はおこなえず、底質への環境負荷も懸念されます。そこで、藻類やデトライタス食性生物と複合的に生産することで、栄養塩類の回収や底質改善を図り、漁場環境を浄化・保全しながら行える「環境にやさしい複合型増養殖を実現する技術を開発します。
5. 温暖化等による養殖漁場の環境変動把握と効率的な養殖技術の開発(H22〜24:生物利用部)
海海域は温暖化の影響を強く受けることが予測され、県北養殖場では夏季水温が30℃以上に達する事例や水温が短期間に2℃以上急変動するといった現象が観測されています。このような水温変動は養殖魚の生理活性に大きな影響を与え、高水温で発生する魚病被害の増加や赤潮の発生率上昇が危惧されます。
そこで、環境変動を把握し、得られたデータを基に水温変動に対応した新たな養殖技術を開発に取組み、低コスト・省エネ型養殖の実現を目指します。
6. 安全・安心な養殖魚づくりに関する研究(H21〜23:生物利用部)
年、食の安全安心が重要視されている中、ワクチン使用による疾病発生予防が進んできています。そのような中、被害の多いブリ類の新型レンサ球菌症についても早期のワクチン開発が必要となってきており、その開発に取り組むとともに、併せて疾病防除及び漁場改善の観点から殺菌力が高いとされているオゾンナノバブル等を用いた飼育環境改善の技術開発を行います。
7. アジ類の肉質改善のための蓄養マニュアル作成(H20〜22:生物利用部)
き網漁業で漁獲されるマアジは、蓄養後出荷するケースが増え、品質については一定の評価を受けていますが、そのバラツキをより少なくし、マアジの品質の向上と安定化を図るため、肉質に関する指標の作成、季節毎などの肉質等の把握による最適な蓄養期間の明確化など、肉質改善のための蓄養マニュアル作成に取組みます。
その他、今回、組織の見直しを行い、今まで増殖部が担当していた漁場環境部門を生物利用部が、生物利用部が担当していた種苗生産部門は増殖部が担当することで効率化を図ることとしております。さらに、水産物加工指導センターをリニュ−アルし、機器等の充実を図り、より衛生的な施設に生まれ変わりました。加工センターの詳細については、改めてお知らせしますが、今まで以上のご利用をお持ちしております。
水産試験場の研究テーマは、漁業関係者の皆様が困っておられることを技術的に解決することと考えていますので、問題点、疑問点がありましたら、どしどし御意見を頂ければと思います。
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