水産試験場
水産試験場からのお知らせ ―水産試験場―

平成24年度の水産試験場の新規・重点事業の紹介

産試験場の試験研究の推進につきましては、日頃からご理解とご協力を賜り、厚く感謝申し上げます。
さて、水産試験場では、平成23年6月に策定された「第5次水産業・漁村振興長期計画」を試験研究の面から実現していくことを目的に、平成24年1月に「宮崎県農畜水産試験研究推進構想」を策定しました。本構想に基づき、第5次長期計画がテーマとしている「儲かる水産業」を支える水産技術の開発等に取り組むこととし、資源部、増殖部及び小林分場を含めた生物利用部の3部において、それぞれ「水産資源の回復と持続的利用(資源回復)」、「効率的生産による漁業経営の安定(コスト削減)」及び「消費者に信頼される水産物の供給(魚価向上)」をキーワードに試験研究を進めています。
以下、平成24年度に取り組む新規・重点事業の一部についてご紹介します。
1.主要浮魚類の漁況・漁場予測技術の高度化(H24〜28:資源部)
遊性の主要浮魚類は、数年から数十年単位で資源が変動しますが、まき網漁業では不安定な魚価や燃油価格の高騰などの課題があり、また、定置網漁業では網替えのタイミングなど操業計画上の予測が必要であることから、漁況見通しを考慮することが、操業の効率化や計画的な経営に必要となっています。そこで、これまで成果を上げつつある長期漁況予測(数ヶ月単位)に加え、資源変動に伴う漁獲水準の変動を予測する技術の開発を行うとともに、新たな海況情報を活用した数日単位の漁況・漁場予測技術の開発に取り組みます。
2.カツオ、マグロ類の漁場予測技術の高度化による操業効率化技術の開発(H23〜27:資源部)
県の基幹漁業であるかつお一本釣漁業及びまぐろ延縄漁業について、その漁場形成要因を明らかにすることは、操業の効率化につながり、高騰する燃油代を節減する上で非常に重要です。また、本水産試験場所属の漁業調査取締船「みやざき丸」は、その業務の大きな柱であるカツオ漁場調査業務の上で、その能力向上が最重要課題となっています。そこで、本研究では、過去に収集された資料から漁場形成要因を解析し、これを基にした漁場推定や実証試験を行い、漁場形成機構の解明並びに漁場予測技術の開発を行っています。
本年度は、カツオ・ビンナガを対象とした予測技術の高度化を図るため、海況データの見直しや予測変数の重み付けの見直し等の改良を進め、精度向上を図ります。また、まぐろはえ縄漁業用の漁場予測システム開発のための漁獲データベースの構築を進めます。
3.養殖新魚種種苗生産技術開発(H23〜27:増殖部)
リやカンパチ、マダイ等主要な養殖魚種の魚価が低迷しており、多様性に富んだ養殖の展開が求められていることから、県水産物ブランド品である「ひむか本サバ」(マサバ)の種苗生産技術開発に取り組み、天然種苗に依存している本魚種の人工種苗の供給を可能とすることにより、生産の安定化とブランド力の向上を図ります。また、温暖化等の環境変動に対応するべく、南方系で高水温に強い「ウスバハギ」の種苗生産技術開発に取り組みます。
4.植食性魚類の食害を克服する藻場造成技術の確立(H22〜24:増殖部)
々深刻さを増す藻場の衰退と磯焼けに対応するため、これらの最も重要な要因と考えられる植食性動物の過剰な採食(食害)を克服する研究を実施します。特に、植食性魚類については、長崎大学や瀬戸内海区水産研究所との共同研究により、植食性魚類の蝟集場所を明らかにし、効率的に漁獲することにより同魚類の食圧を制御する手法や、食害に強いホンダワラ類の利用方法の検討を行います。併せて、植食性魚類資源の有効利用を促進するための方法について検討を進めます。
5.魚価アップのための高品質化技術開発(H23〜27:生物利用部)
獲性魚の価格アップの重要な要素である鮮度保持、品質向上のための肉質の把握や取扱方法の検討はもとより、特に養殖・蓄養魚については、品質を一定にし、周年高品質化のための検討が必要です。そこで、非破壊方式による脂質測定技術を開発し、水産物の高品質化を図るとともに品質をアピールすることで、魚価アップを目指します。また、高鮮度品を食卓まで届けるため、生鮮品のみでなく、凍結保存技術、解凍方法等の検討も行い、魚価向上を目指します。
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