年頭のごあいさつ
水産庁長官 佐藤 一雄
水産庁長官 佐藤 一雄
年あけましておめでとうございます。
平成29年新春を迎えるに当たり、所感の一端を申し述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。
昨年は、水産業の更なる発展のための法制度を整備することができた一方で、自然災害や水産資源を取り巻く情勢等を通じて、水産業が我々の生活に非常に身近で重要な産業であることを改めて実感した一年でした。
5月には、「漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律」が成立しました。漁船保険団体の組織統合一元化や養殖共済の全員加入制度の廃止等を行うことで、漁船保険の保険事業としての安定性を確保するとともに、意欲ある漁業者がより漁業共済を利用しやすい環境を整えたところです。また、伊勢志摩サミットの開催を追い風に、議員立法で「真珠の振興に関する法律」が成立しました。今後、この法律に基づき、真珠の生産者の経営安定対策や真珠の輸出促進等の措置を講じることで、真珠産業の国際競争力の強化を図ってまいります。そして、現在、5年に一度の新たな水産基本計画及び漁港漁場整備長期計画の策定に向けた検討を行っているところです。今年3月の閣議決定を目指して、将来にわたる水産物の安定供給を確保し、水産業をめぐる新たな国際環境にも対応できるよう、充実した計画の策定のための議論を重ねてまいります。
一方、昨年は大規模な自然災害が発生しました。4月の熊本地震により、アサリやノリの漁場や荷さばき所等に、また、8月から9月にかけて日本列島を立て続けに襲った台風により、北海道や東北地方をはじめとした幅広い地域で養殖施設やサケ・マスふ化場等に被害が生じるなど、水産業にも大きな被害が生じました。被災地域において一日も早く被災前と変わらない操業ができるよう、早期復旧に向けて今後も継続して支援してまいります。
さらに、我々日本人の食卓になじみ深いサンマ、サバ、ニホンウナギや太平洋クロマグロなどの国際的な漁業資源の管理に対する懸念も取り沙汰されました。こういった声に対して、水産庁としては、国際的な資源管理が科学的根拠に基づいて適切に行われるよう積極的に取り組んでおります。8月の北太平洋漁業委員会(NPFC)委員会会合、12月の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)年次会合のほか10月の国際捕鯨委員会(IWC)総会などの会議が開催されました。我が国は、これらの場で、資源の持続的な利用のための議論を主導しました。さらに、周辺国・地域との間に締結されている漁業協定に基づく会合などにおいても、先方に資源管理を強く求めました。引き続き、これらの取組を強力に行ってまいります。
水産業の成長産業化のためには、我々水産庁が、幅広い分野で、めまぐるしく変化する水産業を取り巻く現状を捉え、迅速かつ適切に対応する必要があり、水産行政の責任者としてその使命の重さを改めて感じています。
この使命を果たすため、かつて世界一を誇った日本の水産業の復活、すなわち「水産日本の復活」という目標に向けて、水産庁は様々な施策を講じていく必要があります。具体的には、主に以下の取組を通じて、日本の水産業の持つ高い潜在能力を発揮し、「水産日本の復活」の実現を図りたいと考えております。
第一は、浜の活力再生です。漁業者自らが漁業所得の向上を目指す「浜の活力再生プラン」の着実な実行を支援するため、同プランに基づく共同利用施設の整備等を推進いたします。また、持続可能な収益性の高い操業体制への転換のために、広域な漁村地域が連携し浜の機能再編や担い手確保等を目指す「広域浜プラン」の策定・実行や、意欲ある担い手への漁船リース、新しい操業体制への転換の実証等を支援してまいります。さらに、地域資源を活用した漁村滞在型旅行にビジネスとして取り組む地域等を支援する渚泊推進対策にも、新たに取り組んでまいります。
第二は、資源管理・資源調査の強化です。水産資源の適切な管理を通じて、水産資源の回復と漁業生産量の維持増大を実現するために、我が国周辺の水産資源・国際資源に対する資源調査・研究を充実させるとともに、IQ方式の試験的実施、漁獲可能量(TAC)制度の的確な運用や資源管理計画の高度化の取組を進めてまいります。また、周辺国・地域と協調しつつ、国際的な資源管理の強化に向けてリーダーシップをとって対応してまいります。さらに、国際司法裁判所(ICJ)の判決を踏まえた新計画に基づき鯨類科学調査を継続的に実施し、商業捕鯨の再開を目指してまいります。

第三は、水産物の加工・流通・輸出対策です。輸出については、輸出額を2019年までに3,500億円とする目標の達成に向けて、HACCP認定の促進、輸出拡大が見込まれる大規模な拠点漁港等の整備、輸出先国・地域のニーズ等に合わせた海外でのプロモーション活動等によって、高品質な我が国水産物の一層の輸出拡大を図ってまいります。また、国産水産物の消費拡大に向け、消費者等のニーズに応じた水産加工流通の取組を促進してまいります。
さらには、ノドグロなどの漁業価値や消費者からのニーズが高い栽培対象種についての種苗生産技術開発促進や秋サケ資源回復対策等の増養殖対策、養殖業や漁業の現場におけるIT技術の活用、水産基盤整備事業による水産資源の回復や防災・減災の強化などを進めてまいります。また、東日本大震災からの復興の加速化に向け、風評被害対策や販路回復、諸外国・地域の輸入規制の早期撤廃への働きかけ等にも、全力で取り組んでまいります。

以上、年頭に当たり、「水産日本の復活」に向けた本年の取組の方針の一端を述べさせていただきました。水産庁としては、現場の皆様とともに我が国水産業の発展に向けて、最大限努力してまいりますので、引き続き、皆様方の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
最後に、皆様方の御健勝と御活躍を祈念申し上げまして、私の新年の御挨拶とさせていただきます。

GREETING