年頭のごあいさつ
水産庁長官 佐藤 一雄
水産庁長官 佐藤 一雄
年あけましておめでとうございます。
平成28年新春を迎えるに当たり、所感の一端を申し述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。
昨年8月に水産庁長官を拝命いたしましたが、昨年は、世界と我が国の水産業との繋がりの深さを実感する年となりました。
6月にはロシア連邦の200海里水域における流し網漁業を禁止する法律が成立し、今年1月1日からロシア水域におけるさけ・ます流し網漁業が禁止されることになりました。さけ・ます流し網漁業は、北海道の道東地域等を中心に地域経済の中核を担う重要な漁業の一つであり、地元関連産業への大きな影響が懸念されることから、地元の方々の御意向を踏まえ、こうした関係地域が将来にわたって維持発展することができるような対策を実行してまいります。
また、我々日本人の食卓になじみの深いサンマ等について、北太平洋公海における中国・台湾漁船の先取り等が話題となりました。同海域は我が国漁業にとって重要な海域であることから、9月に開催された北太平洋漁業委員会(NPFC)の初会合において、公海サンマ漁船の許可隻数の急増を抑制する等の国際的な保存管理措置の採択を主導すると共に、中国違法漁船等に対する管理強化を要求しました。NPFCや関係国との二国間協議の場等を通じ、科学的な根拠に基づく適切な資源管理体制の構築に向け、引き続き、主導的な役割を果たしてまいります。
さらには、10月にはTPP協定が大筋合意に至りました。水産物については、海藻類の関税維持、漁業補助金における政策決定権の維持、あじ・さば等について一定の関税撤廃期間の確保などの措置を得ることができました。しかしながら、多くの水産物の関税が撤廃になるなど、長期的に見た場合、国産水産物価格の下落も懸念されることから、持続可能な収益性の高い操業体制への転換により、我が国水産業の体質強化を図る必要があります。このため、水産庁としては、政府のTPP総合対策本部で取りまとめられた「総合的なTPP関連政策大綱」に基づいて、漁業者の将来への不安を払拭出来るような水産政策を27年度補正予算を皮切りに展開してまいります。
以上の出来事は、水産業が国民生活と密接に関係しているとともに、関係国との国際関係の中で成り立っていることを我々に再確認させるものであり、水産行政の責任者としてその使命の重さを改めて感じざるを得ません。
この使命を果たすため、かつて世界一を誇った日本の水産業の復活、すなわち「水産日本の復活」に向けて、水産庁は様々な施策を講じて行く必要があります。具体的には、主に以下の取組を通じて、日本の水産業の持つ高い潜在能力を発揮し、「水産日本の復活」の実現を図りたいと考えております。
第一は、「浜の活力再生」です。浜ごとに創意工夫のもと、漁業者自らが漁業所得の向上を目指す「浜の活力再生プラン」の取組を更に前に進め、現在485地区策定されているプランを、28年度末までに全国で600プラン策定いたします。また、TPP大筋合意を踏まえ、複数の漁村地域が連携して取り組む浜の機能再編や中核的担い手の育成を推進する「浜の活力再生広域プラン」や漁船漁業の構造改革を推進する「漁船漁業構造改革広域プラン」の策定を促進するとともに、これらプランに基づく中核的漁業者への円滑な漁船導入等を通じ、持続可能な収益性の高い操業体制への転換を推進します。
第二は、資源管理の強化です。水産日本の復活のためには水産資源の適切な管理を通じて、水産資源の回復と漁業生産量の維持増大を実現することが不可欠です。そのために、我が国周辺の水産資源・国際資源に対する資源調査・研究を充実させるとともに、IQ方式の試験的実施、漁獲可能量(TAC)制度の的確な運用や資源管理計画の高度化の取組を進めてまいります。また、国際的な資源管理の強化に向けてリーダーシップをとって対応してまいります。捕鯨についても、国際司法裁判所(ICJ)の判決を踏まえた新たな計画に基づいて鯨類捕獲調査を継続的に実施し、商業捕鯨の再開を目指してまいります。
第三は、水産物の加工・流通・輸出対策です。輸出については、輸出額を2012年の1,700億円から2020年までに3,500億円に倍増する目標の達成に向けて、オールジャパン体制での輸出促進やHACCP認定の取得等を推進しているところですが、TPP大筋合意を契機として、高品質な我が国水産物の一層の輸出拡大を図ってまいります。また、新商品開発など国産水産物の流通促進と消費拡大を図る取組への支援を実施するとともに、水産加工業者への国産水産物の安定供給を図ってまいります。
さらには、東日本大震災からの復興の加速化に向けて、風評被害対策や販路回復、輸出先国の輸入規制の早期撤廃への働きかけ等に全力で取り組むとともに、漁村の活性化やさけ・ます、ウナギ等の増養殖対策、養殖業や漁業の現場におけるIT技術の活用、外国漁船による違法操業対策、水産基盤整備事業の推進による防災・減災の強化などを進めてまいります。
以上、年頭に当たり、「水産日本の復活」に向けた本年の取組の方針の一端を述べさせていただきました。水産庁としては、現場の皆様とともに我が国水産業の発展に向けて、最大限努力してまいりますので、皆様方の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げる次第であります。
最後に、皆様方の御健勝と御活躍を祈念申し上げまして、私の新年の御挨拶とさせていただきます。
GREETING