関係機関
水産試験場からのお知らせとお願い

平成30年度の水産試験場の新規・重点研究課題のご紹介

産試験場の調査研究の実施にあたりましては、日頃より皆様方のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 魚価の低迷や経費の高騰等による経営環境の悪化や漁業就業者の減少など、水産業にとって厳しい状況が続く中、資源確保と収益性の向上がますます重要になってきております。このため、水産試験場では「漁業の抜本的な収益性の回復」、「水産資源の回復と適切な利用管理」及び「水域環境の保全と環境変化への対応」をキーワードに,平成30年度は22の研究課題と14のモニタリングや基本業務に取り組んでいます。ここではこれらの研究課題の中から、新規・重点研究課題の一部をご紹介いたします。

(1)日向灘海況情報提供システムの開発U(H27〜31、資源部)

 漁業者は、出漁や漁場の判断や、漁場における操業効率化のため、広域・漁場付近の水温・潮流などの海況に注視して操業しています。水産試験場では、平成22〜26年度に、漁業者・試験研究が求める詳細な日向灘の表層海況図を毎日提供することを目指した試験研究を実施しました。その結果、水温・潮流・黒潮が統合された日向灘表層海況の毎日の提供(海の天気図)まで達成できましたが、鉛直方向の海況情報提供、潮流情報の不足等に課題がありました。
 そこで、本研究では,前回の研究課題を解決すべく,鉛直方向を含む日向灘海況図を毎日提供する日向灘海況情報システムを構築することを目的としています。現在、漁業者による鉛直水温の試験観測と琉球大学工学部との共同研究による海洋レーダによる海面流況の試験観測を実施しています。また、日向灘広域の潮流を1時間単位での提供を目指す海洋レーダを、県漁村振興課が整備しています。これらの情報を統合解析して、無駄な出漁・探索が削減可能な情報の提供を目指しています。

(2)資源変動期における主要浮魚類の漁況・漁場予測技術の開発(H29〜33、資源部・経営流通部)

 本県海面漁獲量の約半分を占めるいわし・あじ・さば類のような主要浮魚類については、気候変動の影響を受けて日本近海の資源量が数十年単位で大きく変動し、これに伴い日向灘への来遊状況も大きく変化します。現在、マイワシの増加やカタクチイワシの低迷など、魚種交替と呼ばれる資源変動期に入ったと推定され、これらの資源を利用する漁業と関連産業は、今後の変化に適切に対応していくことが必要です。
 そこで、本研究では、今後の浮魚類の資源生態の変化と日向灘における漁況の変化を予測する技術を開発するとともに、魚種交替が漁業経営や産地流通に与える影響を評価します。さらに、新たな海況情報を活用した漁況予測技術の開発も進め、操業の効率化と漁業経営の安定に寄与していきたいと考えています。

(3)「沿岸漁業の動向を見越した水産業の高度化・安定化に関する研究開発」(H28〜30、経営流通部)

 本県の地域漁村を支える沿岸漁業と産地流通体制の再構築を図るため、平成28年度から沿岸資源の動向を見越した収益性の高い沿岸漁業経営のモデル化と漁獲量の増加が予想される魚種の高度利用技術の開発に取り組んでいます。5トン未満の自営独立型漁業の操業形態構築については、経営実態の解析と高収益な操業形態の抽出等を行うことで、複数漁業の組合せや効率的な漁場利用による経営改善モデルの提案を目指しています。また、ハモやオオニベ等の資源活用を促進すべき魚種の有用成分の把握や加工法の開発を行い、漁獲物の高付加価値化による収益性向上を支援する研究を進めていきます。

(4)「水産物加工指導センターの活動」(経営流通部)

 水産物加工指導センターは、昨年4月に試験販売用製品の製造が可能な施設にリニューアルしてから1年が経過しました。昨年度のセンター利用件数は約50件、利用者数は延べ100名となり、本県水産物の利用加工技術の普及や改良に役立ったものと思われます。近年、簡便性や保存性に優れた缶詰やレトルト食品が見直され、常温流通や保存が可能な水産加工品へのニーズの高まりを受け、水試では、ねり製品や調味加工品等の既存製品の常温品化や小型のキダイやオオニベ等の高付加価値化のためのレトルト商品開発の他、製造・管理工程のスリム化や保存性の向上等の指導、相談に応じております。
RELATED ORGANIZATION