水産試験場
カワハギにおける疾病発生動向と対策 -増養殖部-
 カワハギはフグ目カワハギ科に属する魚で,天然海域では北海道から東シナ海に分布し,水深200m以浅の沿岸に生息します。カワハギは成長が早いこと,ブリ類などの他の養殖種と比べ高値で取引されることから,西日本の養殖生産県で養殖技術や種苗生産技術の開発が進められてきました。宮崎県でもカワハギの種苗生産技術開発に取り組み,2006年度より県水産試験場で基礎研究を,2009年度より一般財団法人宮崎県水産振興協会で量産化技術開発を実施し,2014年度から養殖業者向けに種苗販売を開始するに至りました。また宮崎県では関係機関と連携しカワハギの飼育技術やワクチン開発に取り組んだ結果,β溶血性レンサ球菌症ワクチンを市販化されるに至りました。このようにハギ類の養殖の基盤が固められ,本種の養殖が広がりつつありますが,一方で様々な魚病が発生しています。今回は本種の養殖先進県である愛媛県および大分県と宮崎県の魚病診断結果を活用しながら,魚病発生動向を分析すると共に,個別の疾病と対策について述べます。

1 魚病発生概況

 魚病発生動向を検討するにあたり,2011-2015年度の愛媛県,大分県および宮崎県の魚病診断結果を用いました。図1に愛媛県・大分県・宮崎県の魚病診断状況を示しました。カワハギは6-11月にかけて魚病診断が多く,細菌感染症の診断が最も多いという結果であり,これは過去に調べたカワハギの2005-2009年度の魚病診断状況とほぼ一致しました。今回の集計結果は,養殖現場における魚病発生動向と直結するものではありませんが,カワハギのような比較的新しい魚種では,養殖業者独自の対応が難しく都道府県試験研究機関への診断依頼が多いことから,現場の発生動向を反映するものと考えられます。それぞれの疾病については以下に述べます。
図1 2011〜2015年度における愛媛県・大分県・宮崎県におけるカワハギの魚病診断状況
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