水産試験場

結果

直海地区の収穫状況は試験区間による差はなく、ほぼ減耗はなく生残しており、平均藻体長は99cmでした。合計の収穫量は336kgであり、破棄分の15kgを除いた321kgが販売可能と思われました(図5)。
目井津地区の収穫状況は試験区間において、生残に差があり、@の人工植物区で9割程度、@の対照区では0割、Aの両区ではほぼ全て生残し、@の人工植物区では食害魚の食痕が多く確認されました。平均藻体長は、@の人工植物区で50cm、Aのモール区で71cm、対照区で76cmでした。合計の収穫量は149kgであり、破棄分の7kgを除いた142kgが販売可能と思われました(図6)。
なお、直海地区、目井津地区の試験養殖期間中の平均水温は、直海地区は16.8℃で、目井津地区の@は18.2℃、Aは18.0℃で、低い方から直海地区、目井津地区のA、目井津地区の@の順でした。この順は、食害の程度やワカメの生長といった試験養殖の成績が良かった順と一致しました。設置場所による植食動物との遭遇のしやすさ(蝟集する場所の存在、移動経路か否か等)、潮通し等水温以外の要因も考慮する必要がありますが、少なくとも養殖期間中の平均水温が16.8〜18.2℃の範囲では低水温ほど食害にあいにくく、ワカメの生長も良好である可能性が示唆されました。また、目井津地区の事例から、18.0℃付近で大規模な食害に発展する可能性が示唆されました。
また、今回実施した2種類の食害防止策について、装飾用モールは期間中に全て破損し、耐久性が低く、園芸用人工植物については、耐久性は問題なく、一定の食害防止効果が認められたものの、食害を受けるかどうかは設置の場所によるところが大きいと考えられました。

終わりに

今回のワカメ試験養殖では直海、目井津の両地区で収穫ができ、生産の規模をより大きくすることで、副業として成り立つ可能性が示されました。しかし、場所により食害の影響が大きく、また、前年度の試験では両地区とも食害の影響や原因不明の幼体流失などで収穫に至らず、生産はまだ不安定です。今後は、食害の少ない設置場所の検討、また限られたスペースの中で収益を最大にするため、養殖密度の検討を行っていきたいと考えています。
FISHERIES EXPERIMENT