水産試験場
起業化に向けたワカメ養殖試験 増養殖部

はじめに

藻類養殖は、小さな労力とコストで短期間のうちに収入が見込まれるため、副業的に取り組む価値があると考えられます。しかし、これまでにも本県沿岸では試験的に藻類養殖が試みられてきましたが、取組が定着した例はありません。取組を定着させるためには、各地先における課題の解決と、藻類養殖の経験がない本県漁業者への技術普及、フォローアップが不可欠と考えられます。
県内市場に対するニーズ調査からは、認知度の高い海藻の方が需要があり、特にワカメ、アカモク、アオサ(スジアオノリ等)のニーズがあることがわかりました。そこで今回は、ワカメを対象とした試験養殖を行った結果についてご紹介します。

方法

試験は、延岡市北浦町直海港内(図1)(以下、「直海地区」という)及び日南市南郷町目井津漁港内(図2)(以下、「目井津地区」という)の2地区で行い、それぞれ種糸約10cmを約15cm間隔で挟み込んだ幹縄約30mを2本ずつ展開しました。直海地区では12月16日から展開し、3月4〜16日の間に4回に分けて収穫作業を行い、目井津地区では12月18日から展開し、3月11〜25日の間に4回に分けて収穫作業を行いました。
展開にあたり、過去の試験でアイゴなどの植食性魚類の食害に対して一定の防止効果が確認された事例を参考に、園芸用人工植物と装飾用モール(図3)を用いた試験区を設けました。どちらも、幹縄にロックタイで固定し、それぞれ人工植物区とモール区としました。それぞれ幹縄のみの対照区と併せて設置しました。両地区とも、人工植物区と対照区を繋げた@、モール区と対照区を繋げたAを、直海地区は、同じ場所に設置し、目井津地区は異なる場所に設置しました。
種糸は県外機関で生産されたものを2地区で合計約80m用いました(図4)。展開前の種糸のワカメは目視で確認できるもので、藻体長が約2mmでした。
なお、直海地区、目井津地区の@及びAの試験養殖期間中の水温をデータロガーを用いて1時間おきに計測しました。
FISHERIES EXPERIMENT