水産試験場
図4:都農町地先放流標識イセエビの再捕状況
図4:都農町地先放流標識イセエビの再捕状況
図5:日南市宮浦地先放流標識イセエビの再捕状況
図5:日南市宮浦地先放流標識イセエビの再捕状況

3.再捕結果

放流地先毎の標識放流イセエビの再捕状況(再捕場所・尾数・日時)を図4、5に示しました。
都農地先放流では、12月中までに28尾が再捕されました。放流27日後に16km南で再捕された1事例がありましたが、他は放流場所から2km以内で再捕されました。再捕率は29.8%と他県の報告と比べて比較的高い再捕率でした。
宮浦地先放流では、放流翌年の3月21日までに5尾が再捕されました。再捕場所は放流地点から1.3km以内で、再捕率は3.3%でした。
放流地先毎の再捕イセエビの月別の増重率を表2、3に示しました。
都農町地先放流再捕イセエビの増重率は、9月に再捕された4尾中4尾、10月に再捕された12尾中4尾がマイナスとなっていましたが、17尾についてはプラスの増重率となっており、最大では10月に再捕された1尾で1.94倍となっていました。
宮浦地先放流再捕イセエビの増重率は、全てプラスの増重率となっており、最大では12月に再捕された1尾で1.44倍となっていました。また、3月に再捕された1尾については標識先端がかじられた様になっており判読はできませんでしたが、放流時の平均体重から増重率を出すと2.28倍となりました。

表2:都農町地先放流再捕イセエビの月別増重率
表2:都農町地先放流再捕イセエビの月別増重率
表3:日南市宮浦地先再捕イセエビの月別増重率
表3:日南市宮浦地先再捕イセエビの月別増重率

まとめ

都農町地先放流イセエビについては、割合早い段階で放流地点(禁漁区)から南の方角にある都農港外側の漁場に移動したと考えられます。
おそらく、放流地点は生息場としてあまり良い環境ではないことが想像されます。放流地点周囲には他にも磯建網の漁場はあるということですが、なぜ港外側の漁場で再捕が集中したかについては分かりません。
宮浦地先放流イセエビについては5尾の再捕に留まっています。都農と同様に放流地点(禁漁区)の周囲にはいくつも磯建網の漁場はあるということですが、網にかかっていません。都農町との対比になりますが、放流地点には人工イセエビ礁が入っていることから、生息場所として適しており、あまり移動していないことが想像されます。
一方、月別増重率ですが、都農町地先で9月、10月でマイナスの増重率のイセエビが8尾いました。このことについて測定ミスも考えましたが、他機関の報告書に「マイナスの増重率となることもある」とあり、実際に減量したと考えます。なお、減量する原因は分かっていません。
今回の標識放流では、都農町地先の1例を除き、同一漁場内で再捕され、その多くが増重していることが示されました。このことから「再放流すれば成長して、また同じ漁場で漁獲される」と言うことが導き出されますが、問題は一夏超えた場合です。他機関の報告でも体長15cm位のイセエビでは放流するとほぼ同漁場で再捕されるが、一夏を超えると数十kmに及ぶ移動をするとの報告もあります。そうなると地先資源の管理だけでなく、隣接する地区、あるいはもっと広域での共同した取り組みが必要となるかもしれません。
9月の漁の解禁が待ち望まれます。
5月の動き(県関係)
19日 宮崎県資源管理協議会総会(宮崎市)
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