水産試験場
県内特産柑橘類の有効利用による海産養殖魚の品質向上 〜ブリ養殖でのヘベス残渣の利用〜 増養殖部

はじめに

県の海面養殖業は、出荷価格の低迷等で厳しい経営状況にあり、価格向上に向けた取組が重要となっています。他県ではカボス等の特産柑橘類を餌に添加する取組による品質向上での差別化の事例がありますが、本県においても同様に、養殖業者から県産特産柑橘類の餌への利用について要望があり、養殖魚の品質向上や県産特産柑橘類の利用促進も期待されることから、他県で利用されているユズやカボス等とは原料成分の異なる県内特産柑橘類(ヘベス、日向夏)を利用した養殖試験を平成25年度から開始したところです。
今回は平成25年度の結果について報告します。
平成25年度の試験は、東臼杵農林振興局、日向市、宮崎大学農学部の協力を得て、養殖ブリを使って、延岡市北浦湾の海面養殖場で行いました。ヘベス残渣乾燥粉末(ヘベスの絞りかすを乾燥したもの)をモイストペレット(以下「MP」という)飼料へ添加したものを給餌して、魚の品質向上効果、成長並びに健康状態への影響について調べました。

主な取組内容

1.試験飼料

飼料の原料には、粉末配合飼料、冷凍魚を用いてMP飼料(粉末配合飼料:冷凍魚=2:8)を作製し、それにヘベス乾燥粉末(清本鉄工(株)製)を0.5%添加しました(以下「ヘベス添加区」という)。試験飼料は、給餌船に付属したモイストペレッターを用いて作製し給餌しました。対照区には、無添加のMP飼料を給餌しました。

写真1 ヘベスの写真
(東臼杵農林振興局提供資料より)

写真2 養殖ブリ(県漁連資料より)

2.飼育試験

飼育試験は、平成25年11月14日から61日間、延岡市北浦湾の海面小割生簀(7m×7m)を使って、県内養殖業者が飼育した魚体重約4kgのブリを用いて、「対照区」1,698尾、「ヘベス添加区」1,707尾を飼育しました。餌は1日1回、週3回給餌し、試験期間中、水温の測定やへい死魚の計数を行い、試験開始日及び試験終了日にはブリを取りあげ、体長測定(n=15)を行い、さらに試験終了日には各区から3尾取り上げ血液及び血漿を採取し、血液性状及び血漿生化学性状の分析を行いました。また魚は即殺後、氷冷で宮崎市青島の水産試験場に持ち帰って、ブリ背肉を筋繊維に垂直方向に1cm厚にスライスし、食品用ポリエチレンフィルムで包み5℃で保存し、経時的に破断強度、K値及び血合筋及び普通筋の色差を測定しました。

これまでの成果

飼育成績の結果を表1に示しました。「ヘベス添加区」の生残率は、「対照区」と比べ有意に高く(p<0.05)、魚体重及び増肉係数といった各指標も「ヘベス添加区」の方が良い結果になり、ヘベス添加の効果が出たと考えられました。
FISHERIES EXPERIMENT