水産試験場
養殖カンパチに発生した眼球異常
 

はじめに

 魚をさばいた時に出る骨、内臓、皮などはゴミとして捨てられています。前回、その中の「皮」からコラーゲンをゼラチンの形で簡単に取り出す方法と、それを活用した石けんの作り方を紹介しました(2007年6月号)。その時に試作した抽出ゼラチン液は、少し魚臭がしたことから、臭いを取る研究を継続して行ってきました。
 今回は、その結果も含め、皮を用いた商品開発について紹介します。

水産加工の現状と問題

 水産物はご存じのように加工する際には歩留まりが低く、原料の約4割が骨、内臓、皮などの廃棄物として処理されています。その処理費用は一部市町村より補助されているところもありますが、それでも加工業者にとっては大きな負担となっています。

マリンコラーゲンの特性

 皮に含まれるタンパク質の大部分がコラーゲンということは前回紹介しました。マリンコラーゲンの特性は、牛豚鶏等から取り出すアニマルコラーゲンと比べて低温で溶け出すことです。アニマルコラーゲンは35〜38℃くらいですが、マリンコラーゲンは9〜12℃で溶け出します。つまり、体への吸収が良いということです。
 また、BSE問題が発生して以降、海洋性のものが注目されており、近年は皮、うろこから抽出したマリンコラーゲン製品が多く販売されています。というのも、「コラーゲン」が機能性成分であり、コラーゲン入りの商品は付加価値がつけられるからです。

マリンコラーゲンを使うメリット

図1 試食アンケート結果-1
 マリンコラーゲンを配合したすり身天ぷらを試作し、試食アンケートを実施しました。
その結果、マリンコラーゲン入りの方がおいしいとの回答が半数ありました。コラーゲン入りと無しではどちらを買うかという質問に対しては、80%がコラーゲン入りを買うと回答されました(図1)。買いたい理由としては、「食感がもちもちしていて良い」、「体に良い・肌に良い」、「どちらもおいしさが変わらないならコラーゲン入りを買う」といったものでした。
図2 試食アンケート結果-2
 また、1袋200g(すり身天ぷらが大体5枚くらい)に値段をつけてもらったところ、コラーゲン入りの商品は、コラーゲンなしのものより60円程度高い値段がつきました(図2)。
このことは、「コラーゲン入り」商品が良いイメージを持っており、「コラーゲン入り」によって付加価値がつくことを示しています。また、買いたい理由にある「食感が良い」というのはコラーゲンの効果です。肌に弾力がつくように、加工品にも弾力がつくのです。食感の改善にもつながります。
 このように、コラーゲンを加工品に利用することで、従来品よりも高い値段で売れそうです。しかも、そのコラーゲンは今まで捨てていた皮から取れるのです。原料代は必要ありません。
FISHERIES EXPERIMENT