水産試験場
藻場造成活動の成功例〜北浦ハイの浜における取組〜増養殖部

はじめに

図1 磯焼け域の景観
「藻場」は、魚介類の産卵や生育の場となる上、海水の浄化機能もあります。ところが全国的に、また本県でも、この藻場が衰退する「磯焼け」が発生しています( 図1)。
「磯焼け」の主な原因は、冬から春の水温上昇に伴うウニや海藻を食べる魚の食べる量の増大による、喰う・喰われる関係のバランス崩壊によるものと考えられています。
このような中、漁業者が主体となって取り組む藻場の造成活動について、平成22年度から環境・生態系保全活動支援事業、また平成25年度からは水産多面的機能発揮対策事業にて支援が行われており、現在県内各地で取組が行われています。
自然が相手の取組のため、各活動域での現状や課題は様々ですが、地道な活動により小型海藻の回復などの成果が認められています。今回、この藻場造成活動の成功例として北浦ハイの浜における取組を紹介します。

主な取組内容

1.ウニ除去
図2 ハイの浜の活動域
平成22年度からハイの浜での磯焼け域に活動域を設定し、素潜りによりウニ除去を行っています( 図2)。
毎年、継続的に行うことで再進入するウニを除去し、密度管理を行っている活動域を徐々に広げています。
平成25年度は延べ58人・日で約74,000個体のウニ除去を行いました。
2.ウニハードル設置
図3 ウニハードル
平成2 3年度から海底にウニハードルを設置しています(図3)。
設置は活動域を区切るように、微速航行する船上から海中にハードルの一端から投入し、潜水作業によりハードルの下部を転石の隙間にはめ込んで固定しました。
これにより、活動域へのウニの再進入を阻害するとともに、潜水による活動においては区域を示す目印となっています。

これまでの成果

図4 平成21年度の藻場面積図5 平成26年度の藻場面積
藻場造成活動に取組む前の平成21年度の藻場面積調査では、クロメ、ホンダワラ類、アマモ等、複数の大型海藻による2.0haの藻場が残存しており( 図4 茶色部分)、ハイの浜内で、その藻場とウニが過剰に生息する磯焼け域が隣接している状態でした。取組が開始され、継続的に磯焼け域のウニの密度を適正に保った結果、平成26年度の調査では6.2ha と3倍以上の藻場の造成が確認されました(図5 青色部分)。喰う・喰われる関係のバランスが保たれた海域に、残存していた藻場からタネが供給され、回復に至ったものと考えられます。
また、ウニの身入りに着目し、平成25年度に活動域内外のウニ各20個体分の可食部となる生殖巣の全体重量に対する割合を調べたところ、活動域内の身入りの 割合は活動域外のものと比較し、2倍以上となりました(図6,7)。これまで餌不足により生殖巣の発達が不十分だったものが餌となる海藻が回復したことにより 改善したものと考えられます。 このように、藻場の回復に加え、ウニの身入り改善の観点からも、北浦ハイの浜は藻場造成活動の効果が大きく表れています。
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