水産試験場

種苗生産試験

図3 受精卵図4 ふ化仔魚(0日令)図5 稚魚(51日令)
確保した4尾の雌のうち1尾がへい死し、採卵に用いることができたのは3尾であり、注射投与してから2日後、3日後に採卵を行いました。採卵直後の卵は洗浄後、冷蔵保存しておいた精子を用いて受精させ、2日間合計で約2.2万粒の受精卵が得られました(図3,表1)。その後、容積5kLのコンクリート水槽に収容し、水温23℃に設定し、24時間照明としました。
収容翌日には水槽内でふ化仔魚(図4)が確認でき、2日分の受精卵から約4,500尾がふ化しました。ふ化後3日令から、生物餌料としてシオミズツボワムシを、21日令からアルテミアを給餌し、それぞれの餌は市販の栄養強化剤によりDHA等を強化しました。また22日令から配合飼料も給餌し、徐々に量を増やしていきました。また、換水は6日令までは行わず、7日令から徐々に増やし、取り上げ前には換水率240%まで増加させました。
この結果、51日令で平均全長約23mmの稚魚76尾を取り上げることができ(図5)、ふ化からの生残率は約1.7%となりました。
しかしながら、取り上げた稚魚の9割以上に尾びれの近くの骨異常等の形態異常がみられ、他県での知見から、飼育初期に鰾に空気が入らなかったことが主な原因ではないかと考えられました。
表1 雌3尾分の採卵結果
採卵日 総採卵数 1尾あたりの
総採卵数
浮上卵数
(浮上卵率%)
沈下卵数 ふ化率
(%)
11/2 21,783 7,261 15,183(69.7) 6,600 44.8
11/3 26,261 8,754 7,210(27.4) 19,051 59.2
合計 48,044 16,015 22,393(46.6) 25,651 49.4
※ふ化率はふ化瓶内の数値

まとめ

今回の種苗生産の取り組みで、宮崎県沿岸域で活魚として親魚を確保でき、採卵から授精、卵管理から仔稚魚の飼育までの一連の工程を経て、51日令の稚魚76尾を生産することができました。アカアマダイの種苗生産技術開発については、全国的に数機関が取り組んでいるのみであり、今回の結果は、生産につながったという点で、大きな一歩であり、今後の本格的な試験に向けて明るい材料であると考えています。しかし、生残率が低いこと、また稚魚の形態異常が多く発生したことなど課題も多く、今後、これらの課題の克服に向けて、(一財)宮崎県水産振興協会と連携しながら、効率的に試験に取り組んでいきたいと考えております。
最後に、今回の試験にご協力いただいた関係漁協や漁業者の皆様へ、本誌面を借りてお礼を申し上げるとともに、アカアマダイについては、平成26年度から本格的に種苗生産試験に取り組むこととしていることから、親魚用活魚確保の依頼などをさせていただくことがあると思いますが、その時はご協力の程よろしくお願いいたします。
2月の動き(県関係)
3日 第369回海区漁業調整委員会(宮崎市)
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