水産試験場
宮崎県初!アカアマダイの人工種苗生産 〜増殖部〜

はじめに

本県のアカアマダイ漁獲量は、平成元年をピークに減少し、現在、資源レベルは低位、資源動向は横ばいと評価され、資源回復の取り組みが求められています。資源回復の手段としては、漁獲制限等の資源管理措置の実施はもちろんですが、漁業者のみなさんを支援するために、種苗放流を行っていくことも必要と考えられます。これまで、親魚としての活魚の確保の困難さや、飼育するにあたって飼育水の冷却が不可欠との認識から種苗生産試験に着手することができませんでした。しかし近年、国の研究機関等におけるアカアマダイの種苗生産技術が向上し、親魚を養成飼育せずに、漁獲直後にホルモン処理を施すことで採卵を行えるようになったことから、本県においても、種苗生産の可能性を検討するべく、予備的に試験に取り組みました。

アカアマダイの産卵期とサイズ別雌雄比

図1 天然魚(雌)GSI推移(H24〜25)図2 天然魚のサイズ別雌雄割合
本県沿岸に生息するアカアマダイの産卵期を把握するため、雌の体重に対する生殖腺(卵巣)重量の割合(GSI)の月別推移を調べた結果、8月頃から急激に上昇し、10月頃から下降することが明らかとなり、産卵盛期は9月頃であることが推察されました。(図1)
アカアマダイは雄の成長が早く、大型個体では雄の割合が高いことが知られていますが、実際に本県沿岸のサンプル個体をサイズ別に集計したところ、500g以下のサイズ区分では雌の割合が高く、600g以上では雄の割合が高くなり、800g以上になるとすべて雄であることがわかりました。

親魚確保

他県のアカアマダイ種苗生産に関する報告をみると、親魚飼育において不可欠である低水温管理を行うための冷却コストの問題や、種の習性としてのなわばり行動によって、飼育水槽内で魚同士が傷つけ合うなど多くの課題がありました。
前述したように、採卵前に陸上水槽で親魚養成することなく、親魚の雌を活魚で漁獲後、直ちにホルモン剤(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、HCG)を魚体重1kgあたり300IU注射投与し、一定時間後に人の手により腹部を圧迫し、絞り出すことにより採卵できる技術が開発されたことから、本県においてもアカアマダイの種苗生産に取り組むことが可能となりました。そこでアカアマダイを漁獲している漁業者(延縄漁、旗流し漁)に依頼し、雌を活魚で確保するところから取り組みました。本県では生息水深が100mより深いところにいるため、活魚が得られにくい上、台風等による時化の影響で漁にもなかなか行けないという状況の中、平成25年度には、10月28日〜30日の3日間で8尾(内4尾が雌)の活魚が得られました。これらの活魚には10月31日にホルモン剤を注射投与しました。
また、雄は生殖腺(精巣)が非常に小さく、大型サイズでないと精子を採取できませんが、雌と違って鮮魚から採取できるため、同時期に得られた大型サイズ(主に800g以上)から精子を抽出し、人工精しょうにて希釈保存(4℃で約4日間程度保存可能)しておき、人工授精時に使用しました。
FISHERIES EXPERIMENT