水産試験場
 

採卵・媒精・卵消毒


図3 受精卵
 採卵は、ホルモン注射後2日後と3日後に腹部圧搾により行います。また、精子については雄親魚のウイルス検査を行い、陰性魚の精子でより活性が高いものを用います。採取した卵は人工卵巣液で洗浄後、清浄な海水と人工精しょう液を混ぜ合わせて媒精を行います。媒精後の受精卵は、予め恒温室内において水温を23〜24℃に調整した卵管理水槽に収容し、20〜22時間流水弱通気で管理し、胚体形成確認後(図3)に通気を止め、卵管理水槽内で浮上卵と沈下卵に分離させ、浮上卵を回収します。回収した卵は、事前に準備しておいた0.5ppmオゾン処理海水で1分間かけ流しで消毒します。
 このような方法で、平成26〜28年度には3日間で確保した活魚のうち15〜24尾の雌から合計で約19〜44万粒を採卵し、(一財)宮崎県水産振興協会に提供しました(表1)。

種苗生産試験

 事業初年度の平成26年度に、一部の受精卵を用いて、仔稚魚飼育試験を行いました。5kLコンクリート水槽に受精卵を収容し、開始当初は約24℃の自然水温で、以後発育を促すため23〜24℃で温度調整しました。また、ふ化初期に多い水面での浮上へい死を防ぐため24時間照明を点灯しました。収容翌日には水槽内でふ化仔魚が確認でき(図4)、約16,000尾がふ化しました。ふ化後3日齢から生物餌料としてS型ワムシを、21日齢からアルテミア幼生を給餌しました。また、26日齢から配合飼料も給餌し徐々に量を増やしていきました。全長の推移は図5のとおりで、ふ化時2.3mmのふ化仔魚は、30日齢で約10mmに達し、50日齢で約25mmに成長しました(図6)。
 また、平成25年度課題となった背骨の変形原因となる鰾の形成不全の対策として、開鰾率(鰾形成の割合)の向上試験を行いました。15分毎のエアーレーションの開け閉めを4〜5日齢の間24時間、6〜7日齢は8時から18時の間行うとともに、飼育水の表面の油膜取り装置を改良し4〜10日齢まで油膜除去の徹底に努めました。その結果、6日齢での開鰾率が100%となり、魚体の形態異常が少ない魚をより多く取り上げることができました(表1)。
 最終的に、48日齢で稚魚563尾を取り上げることができました(表1)。
 一方、(一財)宮崎県水産振興協会においては、水産試験場で生産した受精卵を用いて、年々取り上げまでの生残率も向上し生産尾数を増やしており、より多くの稚魚の試験放流に貢献しています(表1)。
図4 ふ化仔魚(0日齢) 図5 全長推移 図6 取り上げ後の稚魚
FISHERIES EXPERIMENT